シカゴ、その二つの顔

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 シカゴは暗黒街の帝王と呼ばれたアル・カポネが活躍したということで、彼の死後63年を経ても「ギャングの街」の不名誉なラベルを付けられたままである。
 かといって他の大都市と比べて際立って危険だとも思えないが、殺人事件に例をとれば1992年の年間943件から昨年度は458件まで下がり、この分なら犯罪の街の汚名返上かと思いきや、今年1月から4月現在まで既に113人の犠牲者を出している。
 この数が今年に入ってイラク、アフガニスタンで戦死した米兵の数とぴったり同じだという。つまりシカゴの犯罪発生区域に住む危険性は戦場と同じということになる。2人の州議会議員から州知事に、ナショナル・ガードを出動させてシカゴの治安を守るようにという進言があり、賛否両論。
 国内におけるナショナル・ガードの活躍は、近年水害や地震、竜巻などの被災地で砂袋を作ったり、被災者を助けたりでお馴染みだが、はたしてギャングの抗争や麻薬の取引のトラブルを解決できるかどうかは疑問である。
 市長も市警の警視総監もナショナル・ガードの出動はこの場合大した効果は無いだろうと消極的。もちろん相手が地震や台風という自然現象でないだけに、自分たちで治安が守りきれないとなれば面子はない。そう簡単に「お願いします」とは受けられまいが、予算削減で警官の数を大幅にカットされており、人口270万の都市の守りに2000人の警官では事実心許ないことも確かである。
 平和に慣れてしまった私たちには、ナショナル・ガードの出動というだけで、たちまち街が戦場に化してしまうような不安に駆られるが、イラクやアフガニスタンの人々は彼らの暮らしの中に戦車があり、銃撃戦があり、常に硝煙や血の匂いを嗅いでいなければならない。
 平成天皇が皇太子時代に「レイクショー・ドライブは素晴らしかった」と言って下さったミシガン湖沿いの高速は、いま緑の若葉が遅い春の陽に輝き、花壇に色とりどりの花が咲き乱れ、公園では子供や犬がころげまわって遊んでいる長閑な風景がみられる。シカゴもまた他の都市と同じように、幾つもの顔を持つ街である。【川口加代子】

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