暮れなずむ

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 イースターが過ぎ、周囲の木々が新緑に染まり、庭の花も短い春を謳歌する季節になった。ハワイ州、アリゾナ州(の大部分)を除いて先月中旬から実施されている、いわゆる「夏時間」(デイライト・セービング・タイム)により日没が1時間遅くなり、まだ明るいうちに職場から家に戻り、夕方から家族で公園にでかけ楽しむ人々の姿も多くなり自然な風景だ。夏時間に加え、これからの時季は秋冬にくらべ、日暮れに要する時間が長くなるので、これを「暮れなずむ」とも表現される。一時期、日本で卒業式の定番ソングでもあった海援隊の「贈る言葉」という歌があったが、この中で武田鉄矢さんが歌う声が耳の奥に残っている。
 ♪暮れなずむ町の光と影の中、去りゆくあなたへ 贈る言葉・・・。
 この歌詞にある「暮れなずむ」とは、「暮れ泥む」とも書き、日が暮れそうで暮れないでいる状態をいい、これは春や夏の空をさす言葉だという。一般に秋の日は「つるべ落とし」と表現するが、「つるべ」とは井戸水を汲むために、縄や竿(さお)などの先につけておろす桶(おけ)であり、「つるべ」が井戸にストンと落ちることから秋の日暮れが早いことをさした言葉だ。インターネットのNHK放送文化研究所のページにあった「暮れなずむ」の説明によると、「なずむ」という動詞は古事記や万葉集にも出てくる古い言葉で、「水・雪・草などに阻まれて、なかなか思うように前に進めないこと」を表すのだそうだ。このような意味から広がって、物事がなかなかうまく進まなくなること、また、しようとしていることがうまくいかずに思い悩むこと、なども表すようになったのだという。「暮れなずむ」というのはこの意味を生かしたことばで、「暮れなずむ空」「暮れなずむ春の日」などのように使うのだという。これと近い意味のことばとして春の季語にもなっている「暮れかぬる」「暮れ遅し」「夕長し」などがあるという。折角の暮れなずむ光とともに日足の延びる季節だ。エコ時代を迎え、電力ほかのエネルギー節約など、省エネ対策の一環にもなる日照時間をもっと有効活用し、心にゆとりをもっておおいに春を楽しもう。【河合将介】

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