「自閉症の正しい知識を」:JERC映画上映に230人、障害への関心高く

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会場には約230人が集まった


あいさつに立つユニオンバンクの南雲さん


 海外に在住する日本人子女への教育を支援する「日米教育サポートセンター」(JERC、木下和孝会長)は3日、自閉症の青年とその周囲の人々が織りなすヒューマンドラマ「ぼくはうみがみたくなりました」(企画・原作・脚本、山下久仁明)の無料上映会を催した。会場には、予想をはるかに上回る230人が集まり、自閉症や障害に対する関心の高さをうかがわせた。
 同映画は、山下さんの自閉症の長男、ヒロキさんをモチーフにした小説をもとに、ヒロキさんの事故死後に自主制作された。山下さんは、自身の経験を通じ、「自閉症の子供を持つよさもあることを知ってもらいたい」との思いを込めて制作。昨年8月から日本全国で自主上映され、現在までに150カ所、計3万人が鑑賞している。
 自身も自閉症児の父親であるユニオンバンクの南雲岳彦さんが、インターネットを通じて山下さんと知り合い、同映画に共感。サンフランシスコやロサンゼルスでの上映を実現させようと、同行や三菱東京UFJ銀行の協力の下、子供たちの特別支援教育サービスを提供している「ペアレンツ・ヘルピング・ペアレンツ」(PHP)とJERCに働きかけ、約1年の準備を経て、このほど海外初上映が実現した。
 南雲さんは、「自閉症は特別なものというよりも、社会の中に普通に存在しているもの。排除すればいいという問題ではなく、(障害者や健常者など)互いの違いを認め合いながら共存していくことが大切」と訴えた。
 230人もの人が集まったことについて、「今まではあまり表に出てこなかったけれど、いまや新生児の約110人に1人が自閉症と診断される中、自閉症が以前に比べもっと身近な問題として感じられるようになったのでは」と考えを述べた。
 また、2歳で自閉症の診断を受けた長男(11)との生活の中で、「自分が親として子供を助けていくことの他に、社会全体を変える必要を感じる」といい、今後も同映画やネットを通じて社会に働きかけていきたいと述べた。
 この日、2人の子供と映画を見に来たトーレンス在住の鈴木素子さんは、「日本にいる友人のお子さんが自閉症なので、とても身近な話題」といい、「自閉症のお子さんはうそをつかないとっても素直な性格なんです。でも、社会や周りの人になかなか受け入れてもらえない苦労を聞いているので、映画上映によって、自閉症を知らなかった人にも正しい知識を持ってもらえたら」と話した。
 また、「孫が自閉症と診断されたので、自分ももっと勉強しようと思った」と話すのは、70歳代の男性。映画を見て、自閉症という障害について理解が深まったと感想を述べた。
 13歳になる自閉症の長男、大翔くんとともに同映画を鑑賞した吉山るり子さんは、ロサンゼルスを拠点に障害を持つ子供たちの日本語を話す親によるサポートグループ「手をつなぐ親の会」(JSPACC)の会長を務める。映画を見終わり、「大翔を見ているようだった」というほど、自閉症児の行動を正確に表していると感心した。この映画を通じ、「世の中にはいろいろな人がいて、その中に障害を持つ人もいる。自分の常識や尺度だけで人を判断するのではなく、自分と違った人も理解し、互いを認め合う社会になってもらいたい」と思いを述べた。

ロサンゼルス上映を引き受けたJERCの木下会長


 ロサンゼルス上映を引き受けたJERCの木下会長は、「南雲さんからお話があった時、教育の一環としてぜひ、お手伝いさせていただきたいと思った」といい、「障害があることを隠していた時代は終わり、皆で理解し、受け入れていく世の中にしていかなければならない」と訴えた。
 今回の海外初上映を機に、英語の字幕も自主制作。今後、アメリカのみならず英語圏での上映を希望している。上映希望者は、同映画のホームページで―
 http://homepage2.nifty.com/bokuumi/screen.html
「ぼくうみ」 自閉症の青年と、少し人生に行き詰まり気味の看護学生が偶然から海へ向かうたびに出てしまうことから始まる。「自閉症」という言葉だけが一人歩きし、引きこもりやうつ病と間違われることが多い中、同映画は先天性の障害である自閉症に焦点を当て、実際の症状や接し方などをありのままに映し出したヒューマンストーリー。
【中村良子、写真も】

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