UCLA名誉教授の名物講義録:「パワー・オブ・フィルム 名画の法則」

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左から)翻訳者の長土居さん、著者のハワード・スーバー教授、同じく翻訳者の森さん

多くの映画関係者を世に送り出してきた、UCLA映画学部のハワード・スーバー名誉教授の著書「パワー・オブ・フィルム」の日本語版がこのほど、森マサフミ、長土居政史両氏の翻訳により発売された。スーバー教授が実際にUCLAの授業で教べんをとる「記憶に残る名画」の法則が述べられた同著は、映画製作者のみならず映画愛好家にも向けて書かれており、同教授の長年の名画分析の結果が凝縮された1冊となっている。名画と呼ばれる作品にはある共通した秘密の法則が存在する。同著はその謎を解き明かしていく。
 同著の出版には、映画を愛する者たちの熱き思いが込められている。UCLAの卒業生でスーバー教授の教え子だった長土居政史さんは1年前、教授と15年ぶりの再会を果たす。UCLAのもう一人の恩師が亡くなり、その追悼式でのことだった。2006年に出版された同著のオリジナルの英語版を既に読んでいた長土居さんは、学生時代に受けた講義の感動を日本の映画ファンにも伝えたいとの思いを教授に伝えた。その思いに教授は喜んで承諾。森マサフミさんにも協力を依頼し、翻訳作業がスタートした。
 教授が一番気をつけていることは、名画に対する固定観念をいかに覆すか。「ハリウッドの映画製作者をはじめ、多くの人がハリウッド映画の成功にはハッピーエンディングが不可欠と信じている。しかし人々の記憶に残る、『カサブランカ』、『風と共に去りぬ』、『ゴッドファーザー』、『卒業』などの名作は『ビタースイートエンディング』。主人公にハッピーエンディングは訪れていない。時としてそこに『死』が存在し、愛する人との『別離』がある。ハリウッドの映画製作者たちがもつ『ハリウッド映画はハッピーエンディングでなくてはいけない』という考えを覆さないといけないと思った」と力を込める。
 このような教授の映画分析は実際の授業で行われていたもの。「生徒たちは前のめりで教授の一語一句に聞き入っていた」と長土居さんは当時を振り返る。
 「授業は映画を学問として取り上げ、掘り下げていく。クラスをとったときの感動は今でも残っている」と語り、講義で配られた資料は今でも大切にとってあり、自身が脚本を書くときに参考にしているという。
 同著はクラスで論じられている講義内容が本になっているため、専門用語が多かった。そこで注釈を加えオリジナルの英語版よりさらに詳しくわかりやすい内容になっているという。
 この翻訳作業を通して、映画の見方が変わったと森さん。「本の中に『双連性』と翻訳した言葉がある。これは2つの異なる要素を合わせると映画の面白さが2倍以上に膨らむという定義。翻訳後、これらの教授の定義を映画の中で発見しながら鑑賞するようになった」と同著の自身への影響を述べた。
 「映画は人を感動させるもの」と口をそろえる教授と翻訳者たち。3人の映画への一途な愛情と、映画を愛する人に同著が役立つことを願う思いが込められている。
 「この本は単なる「アメリカ映画の作り方」を書いた本じゃない。『不朽の名作の作り方』だ」と教授は語る。同著を読んだ読者によって、次の不朽の名作が生まれる日は、そう遠くないかもしれない。【吉田純子、写真も】

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