西本智実がOCFCを指揮:「第九」教え、合唱の魅力語る

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OCFCを指揮する西本智実(右)

 初の米国公演のため来米した指揮者の西本智実が3日、アーバインのヤマハミュージックセンターを訪れ、同所で練習する日本人合唱団「OCFC」(Orange County Friendship Choir、永山繁雄会長)が歌うベートーベン第9交響曲「歓喜の歌」の指導を行った。質疑応答では、今回共演した韓国人ソプラノ歌手のスミ・ジョーの奇才さを紹介したり、合唱の魅力を語るなどした。
 日本を出てからロシアを起点に欧州各国の権威ある数々の交響楽団を率いて腕を磨いた西本。日本ではアマチュア合唱団に教えることは稀だといい、今回はロサンゼルス、オレンジ郡、ニューヨークを回る公演の合間を縫って、特別にOCFCを訪問した。
 西本は、第九指導に入る前に団員の素朴な疑問から専門的なものまでさまざまな質問を受け、実体験を織り交ぜながらていねいに答えた。
 音楽を始めたきっかけは、声楽家の母親の影響で、ピアノから入ったという。オーケストラやオペラを鑑賞し、歌手やピアニストのそれぞれの優秀性は分かったが「全体を作っているのは誰か」と自問。考えると、指揮者が束ねていることに気づいた。「指揮者のさじ加減で、こうも変わるのか」と、子どもながらに不思議に思い指揮者を志した。

西本は体全体を使い指揮した

 常任として同じオーケストラを何度も指揮すると「あうんの呼吸」や「本番での集中力などメンバーの変貌ぶりが予想できる」。逆に、各国を回る活動では「1度のリハーサルで本番へ入ることもあり不安がある」と吐露。だが、「いろんな国で初めてのことを積み重ねるのも必要」と説いた。
 今年1月に初共演したスミ・ジョーについては「人間的に尊敬できて、次のことと今の処理を両方考えるすばらしい人」と称えた。スミ・ジョーら一流の音楽家の共通点は「意識せずに、能力として空間を変える力、オーラがある」と話した。
 合唱の魅力は、オーケストラと同様に「いろんな声が集まってハーモニーを作るので、終わった後のメンバーの変貌ぶりがすごい」とし、「1人では作ることができない目に見えない創造物」と表現。鍛錬して合わさった声は音質が異なるため「各々が聞き合ったりして、みんなでハーモニーを作る認識を持ってほしい」とエールを送った。
 第九の合唱では、西本は指揮しながらポイントレッスンを行った。歌詞の意味を解説しながら「気持ちを込めて歌うように」と強調。予定した30分間を大幅に超す熱のこもった指導を行った。
 アルトの鈴木澄子さんは、昨年のディズニーホールで第九の大合唱に参加してからのコーラス歴1年。西本から直々に指導され「一生に一度の経験ができて思い出になった。西本さんはオーラが出ていた」と興奮気味に話した。「素人にも真剣に的確でプロフェッショナルなアドバイスをしてくれてよかった。指揮は、体全体を使って表現し、ジャンプしたりして音楽を本当に愛する人なのだと思った」と述べた。
 他の団員は、「夢のようだった」「第九の奥深さを教えられた」「カリスマ性があった」「見とれてしまった」「合唱に対する考えが変わった」などと感激の面持ちで話した。マエストロに「発表会で指揮してほしい」とリクエスト。西本は「機会があれば、やりたい。成熟してほしい」と願った。【永田潤、写真も】

メンバーの質問に答える西本(左)。右は永山会長

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