植村花菜は、べっぴんさん

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 感動する歌に久々に出会った。植村花菜が歌う「トイレの神様」がそれで、昨年のNHK紅白歌合戦での熱唱を見て、感極まった人も多いはずだ。植村は、小3から一緒に暮らした亡き祖母への思いを綴った詩に曲を付け、ギターを引きながら優しく歌う。感情を込めた美しい声が、胸にしみ入る名曲である。
 便所掃除を嫌った植村だったが祖母から「トイレには女神様がいて、磨くと『べっぴんさん』になれる」と習い実行した。そして、それを曲のタイトルにした。歌は反響を呼び、自身の半生を描いた著書が出版されたばかりか、ドラマ化され、トイレメーカーがテレビのCMに採用。何よりも、歌が10代の若者にも支持されていることがうれしい。
 聴く人は、自身の懐かしい「おばあちゃんの思い出」にひたる。共感し、涙が止まらないという人が多いという。教えられたこと、優しくされたこと、お小遣いをもらったこと、怒られたこと…。自分を犠牲にした子守りは、たいへんだったことだろう。
 何度も曲を聴くがその都度、感慨深い思い出が蘇ってくる。たいてい、祖母は2人いて、私の場合は曲を聴くと、いつも決まって母方の祖母が先に目に浮かび、次は父方が出てくる。それが、交互に繰り返されるのが不思議でならない。
 世話を掛けさせただけで、おばあちゃん孝行ができなかったことを悔いていたが今回、2人の祖母を思い出すことができた。この歌と植村に感謝したい。
 植村はデビューからヒット曲に恵まれず、所属するレコード会社から契約解除を通告されていた。ところが歌が大当たりし、まさに起死回生。窮地を救ったのは、天国の祖母だったとしか考えられない。
 残念ながら紅白の晴れ舞台を見せることはできなかったが、歌い終え「おばあちゃんも喜んでくれたと思う」と話した植村。本人は否定するが、歌っている姿はべっぴんだ。そうなれたのは、祖母の教えを守ったからだろう。誰が見ても植村花菜は、べっぴんさんだ。【永田 潤】

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