「シニアー・シティズン」

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 クリント・イーストウッド主演の映画『イン・ザ・ライン・オブ・ファイアー』(ザ・シークレット・サービス)の再放送をまた見る機会があった。
 大統領暗殺を企てる男をシークレット・サービスの超ベテラン大統領警護員であるフランク・ホリガン(イーストウッド)が追う、スリリングな映画なのだが、再放送を見るたびに最も鮮明に記憶に蘇ってくるのは、おかしなことに、1993年に封切られたときにアルハンブラ市内の映画館で耳にした、後ろの座席にいた30歳ぐらいの男性が隣のガールフレンドと見えた女性につぶやいたひと言だ。
 フランクと同僚の若い女性警護員、リリー・レインズがワシントンDCのリンカーン・メモリアルの石段で会話するシーンだった。フランクがリリーに〈君はどんな人間像を代表してこの仕事をやってるんだ?〉というようなことを尋ねる。リリーは〈フェミニストね〉と答えたあと、フランクに〈あなたは?〉と尋ね返す。フランクは〈白人の、男で…〉と答え始める。そのときに後ろの男性が女性にこうつぶやいたのだ。〈シニア・シティズン!〉 女性の笑いに遅れることなく、わたしも「なるほど!」と笑いを噴き出してしまった。
 フランクは1963年にケネディー大統領が暗殺されたときにも大統領を警護していたのだから、映画のストーリーの中では警護員歴30年。若ければ50歳代後半だろうが、もしかすると60歳になっているかもしれない男だ。後ろの座席の男性にはフランクがそう見えても仕方なかった。笑ったわたし自身もまだ40歳代の後半だった。
 映画をアルハンブラで見たときからすでに18年が過ぎている。いまではわたしが正真正銘のシニア・シティズンになっている。日本でなら高齢者、お年寄りと呼ばれても不平が言えない年齢だ。気は十分に若いものだから、周囲からはそう見られているのだということをつい忘れてしまう。やはり、気をつけるべきなのかもしれない。再放送を見て、そんなことを考えさせられた。【江口 敦】

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