死ぬ権利

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 「死の医師」と呼ばれたジャック・ケボーキアン氏が3日、死去した。「死ぬ権利」を訴え自殺装置を開発、約130人を安楽死させたことで有名。98年、同装置で患者が死亡する映像が公開され、翌年第2級殺人罪などで起訴された。8年と2カ月半服役し、医師免許もはく奪された。
 久しぶりにホストファミリーの友人を思い出した。
 若くして夫を亡くし、子供がいなかったその女性は、東海岸の小さなビーチタウンでコミュニティー活動に精を出し、周辺住民から「みんなのお母さん」として慕われていた。
 しかし70歳を前に、突如体が硬直する難病に襲われ、頭は冴えているにもかかわらず、体だけがまったく動かなくなった。自分で食事も入浴もできない。「夫が亡くなってから、私は何事も一人でこなし、皆の世話をするのが生き甲斐だった。自分で自分の面倒すらみられないなんて、私には耐えられない」
 自立が失われていくことに苦しみ、彼女は介護施設を退所。私財を売り払い、スイスへ飛んだ。同国では、医師以外の人が行うことを条件に、外国人を含み、自殺ほう助による安楽死が認められている。
 米国では、オレゴン州とワシントン州で、最低2人の医師から「余命6カ月未満」との診断を受けた同州在住の成人末期患者に限り、本人が望んだ場合医師のほう助による自殺が法的に認められている。
 モンタナ州では、州最高裁が09年、「末期患者が自殺を望んだ際、医師が致死量の薬物を処方してもその医師は罪に問われない」との判決を下し、事実上医師の自殺ほう助を認めた。
 一方加州では、92年に似た内容の提案が住民投票にかけられたが、46%の票で否決されている。
 スイスに飛んだその女性は、私のホストファミリー宛に送った最後の手紙に、こうつづっていた。
 「死ぬのは怖くない。それ以上に怖いのは、自立を失ってまで一人無理やり生かされていること」
 「死ぬ権利」の是非は、今後も世界中で根強く議論され続けるだろう。【中村良子】

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