一色正春・元海上保安官が講演―領土問題で国民の意識改革を促す

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尖閣諸島沖の日本の領海で、日本の巡視船が追尾した中国の漁業監視船の航行ルートを示す一色正春氏

 昨年9月に尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件の映像を流出させた元海上保安官の一色正春氏が来米し16日、小東京のユニオン教会で講演会を開いた。尖閣諸島をめぐる中国の領海侵犯や他の領土問題に対する政府の危機管理の甘さに警鐘を鳴らし、関心の希薄な国民の意識改革を促した。一色氏は、日本をよりよい国にするための活動を当地で行う日系の非営利団体「グローリーサン」(櫻井雄一郎代表)の招きで、「日本人よ、目を覚ませ―SENGOKU38に聞く」をテーマに約1時間40分、会場を埋めた約260人の参加者に熱弁をふるった。
 始めに「自衛隊の緊急発進(スクランブル)が昨年の3倍になった」と、中国が日本の領海・領空を侵犯する現状を説明。8月には中国の漁業監視船(公船)を日本の巡視船が約9時間も追尾したこともあったという。民間の漁船は海上保安庁が対応できるが、公船は治外法権があるため立ち入って逮捕できない問題点を指摘。公船を使った中国のけん制は、衝突事件で適切な対応を取らなかったことが原因だとし「中国が攻めてきている。ワンランクアップしている」と危機感をあらわにした。

領土問題で「国民の関心が稀薄」と指摘する一色氏

 映像で確認できる追突した漁船の後方の所々に点のように写っている物体は、常に何十隻も操業していた中国漁船だという。領海内で当時30隻、外には150隻、日本の船はわずか4隻だった。「ここまでくると、物理的に武力を使わない限り難しい」と、元保安官の立場から専門的に分析した。
 このような日常的な中国漁船の違法操業を日本は何十年も見逃してきたという。その結果、故意の衝突が起こり、その事件を放置したたため、公の漁業監視船が来るようになったと解説し「日本が有効な対抗策を取らないから、中国の攻勢がエスカレートしている」と危機感を募らせる。不適切な対応については「役人も政治家も問題を先送りにする」とし「尖閣だけではなく、竹島、北方領土もそう。日本は、誰が物事を決定、命令しているのかが分かりにくい。無責任」と体質を非難した。
 「国内法に則って対処すれば、中国は何もできなかった」と強調。「その足りない部分を外交で補強すればいい。ただし、外交には軍事力のバックアップが必要になる」。警察権が及ばない公船に対する解決にも「外交ルートしかなく、侵略行為に対する防衛出動になる。そうなれば憲法第9条があるので、一筋縄にはいかない」
 軍事力行使には9条改正が必至となるが「血を流してまで、国民に領土を守る覚悟があるのか? 本当の戦争は怖い。自分が行ったり、自分の子どもを行かせるかなど、そこまでの覚悟がみんなに備わってこないと難しい」と慎重に述べる一方で、改正には賛成意見を持っており「憲法解釈はへ理屈。自衛隊は戦車、飛行機があり、軍隊でないというのは、どう見ても無理がある。一刻も早く、うそではない法律に変えるべき」
 那覇地検が日中関係を考慮して船長を釈放した3つの理由を説明した。①逃げ惑って衝突したので故意ではない②計画性がない③被害が軽微。だが、目標までの距離を目測し衝突させた確信犯だとし、修理費用は1000万円を超えていて未払い。再犯は「(船長は)また来ます」―と、矛盾点を列挙して検察を批判。さらに、逮捕容疑が外規法(外国人漁業の規制に関する法律)でなく、同法よりもずっと罰則が軽い公務執行妨害

参加者の質問の答える一色氏

の適用に「国内法で粛々と対応したが、実はうそがあった。船と乗組員を帰国させ、立件する気はまったくなかった。最初から腰が砕けていた」「今だから笑えるが当時、国民は映像を見ていなかったから、うそが分からなかった」
 事件の動画投稿は「絶対的に日本が正しいと言うには映像を見ないと分からない」と思い立った。「黙っていたらそのままになってしまう。誰かがやってくれると思った。だが、誰もしなかったので仕方なく自分でやった」と動機を明かし、家族や同僚の立場を考慮し躊躇(ちゅうちょ)したという。今は英雄視されているが「ありのままの事実を知らせただけ。やった人間はどうでもよく、私の役割は11月4日(昨年の投稿した日)で終わった。映像の中味が大事で、みんなで考えてほしい」。自身の投稿は国家公務員法の抵触はないと主張した。
 質疑応答が持たれ、コーストガード(米国の海上保安庁)に就職予定の参加者にアドバイスを求められ「私のように上の命令に逆らってはいけない」。前線で領海を守る海上保安官が受けている指示について問われ「尖閣諸島では領海問題があるため極端に言えば、中国人に殴られても逮捕はするな。それぐらいのことは言われている。現場の人間は何もできない。上からやるなと言われれば、何もできないのが現状」。映像の投稿者名「SENGOKU38」の意味は「内緒」。
 領土問題について力説し「国民の関心が稀薄。国民一人ひとりの考え方が変わっていかないといけない」と奮起を促した。【永田潤、写真も】

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