「日本異質論」のジェームズ・ファローズ氏の夫人、デボラ・ファローズさんの書いた中国滞在記、『Dreaming in Chinese Mandarin』が米アジア通の間で話題になっている。
 持ち前の好奇心と言語に対する専門知識を武器に、中国人民の大海に溶け込んだデボラさん。「中国は共産主義一色の一枚岩なんかじゃないわ」と実感しつつ、中国人に接すればするほど、欧米(そして日本)とは明らかに異なる慣習に目を丸くした。例えば、人にものを頼む時、中国人は英語で「Please」にあたる言葉を一切使わない。満員の地下鉄で降りようとする乗客は「Excuse me」とも「Pardon me」とも言わずに、大声で「Xia che!」(Off the car!=降りるぞ、降りるわよ)と人を押しのけていく。レストランでビールのお代わりを頼んだり、箸を頼むのに「Fuwuyuan! 」(Waitress!=ウェートレス!)と怒鳴る。なぜか。
 元「読売新聞」北京特派員氏に聞いてみると、
 「儒教的伝統を受け継いでいる中国社会では、〈自分は、同心円の芯、すぐ外側が親兄弟、その外側が親戚、その外に同郷人・・〉といった人間関係になっている。つまり、このロールケーキの中に含まれていない人間は、人にあらず、ということになる」。従って、「礼儀」はそのロールケーキ内では重要だが、その外にいる人たち(つまり、たまたま乗り合わせた乗客やレストランのウェートレス)には必要ないらしい。デボラさんはある中国メディアとのインタビューでこうも述べている。
 「中国人は、中国語を学ぶ外国人と一緒に学ぼうとします。忍耐強く、私の下手な中国語を直そうとしてくれる。うまく発音出来ると、一緒になって喜んでくれます。日本人は、私が間違っていても褒めてくれる。まるで私が最初から間違えるのは当たり前だと思っているんでしょうね」
 確かに日本人はよく褒める。本心でもないくせに。
 岡目八目。たまには欧州系米人から見た中国、そして日本について学ぶのも悪いことではない。【高濱 賛】

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