NHKテレビの日曜美術館。男女の解説アナウンサーがゲストを迎え、洋の東西の美術品を解説する。
 絵画から彫刻、織物、焼き物とその幅は広い。使われた素材や時代背景、その当時の競争相手などを織り交ぜながら最新のカメラや分析機を使い、時には制作現場まで辿ってさまざまな角度から分析をする。一つ一つの解説に目が開かれる。
 本来アートは自分自身の目や耳で感じとるものだというが、万人がその能力を持っているわけではない。このようにさまざまな角度から味わう解説を聞き、素材や制作方法まで知ることは人々をより深い美術鑑賞へいざなう。
 日曜美術館では放送の終わりに各地の展覧会も紹介されるが、日本には実に多くの良い美術館がある。また個人の収集や村や町の博物館や美術収集品も多い。
 日本は昔から朝鮮や中国より新しい文物を取り入れ、未知の文化に驚き・憧れ・模倣し・昇華させて日本独自の文化を築いてきた。聖徳太子が当時の文化の華・仏教を取り入れ国の統一を図ろうとしたのもうなづける。
 人々は仏の教えよりもまずキラキラと輝くばかりの仏像や袈裟、仏具や経典の装飾に打ちのめされるほどの衝撃を受けたに違いない。そしてそれまでの神道を打ち壊すのでなく、神仏混交という離れ業で精神上の安定を成し遂げた。
 他の国々では王朝が代わるたびに前の王朝の文物は破壊され、特に歴史書や思想書は徹底して焼かれた。中国や韓国の歴史学者が資料を日本に求める例も少なくないという。
 先祖を敬い古きを尊ぶのは日本人の血に流れるDNAなのかも知れない。江戸時代から町人や農民までが寺子屋に通い、富者は美術品や書物を集め、町や村のお祭りに神輿などを寄進した。
 11月3日の文化の日には文化勲章をはじめ秋の叙勲があった。今年は天皇がご病気で皇太子が代行された。
 日本食やアニメ、ファッション、音楽と日本の文化が世界で注目されている。それもこのような長い長い歴史の積み重ねとその時々に打ち込み全身全霊で工夫を凝らした先人たちの努力の蓄積があってのことであろう。11月は文化の月である。【若尾龍彦】

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