春よ来い、早く来い

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 今、春を一番待っているのは被災地の方々だろう。いや、日本国中、全ての人々も。被災した仙台に住む姉の便りに、今朝は雪かきから始まったと読むと、南加で暖かい朝を迎えることをすまなく思ったりもする。何時だったか、母の病気見舞いに梅雨の季節に故郷の山口に帰省したことがあった。28日間、毎日、雨が降り続いた。暗い雨に取り込まれ、何も起こらない地方の城下町。南加の何処までも青い空と人種のるつぼの街の活気。住む場所と気候が住人の生活にどう関わるかを考えさせられた。
 LAはこと気候に関してはこの世の楽園と言っていいだろう。夏涼しく冬温暖な地中海性気候。ところがアメリカ広しといえどもその気候は全土のわずか6パーセント。その貴重な6パーセントの帯の中に南加がすっぽり入っているのだそうだ。だからここに住めるのは幸運。ニューヨークからの訪問者は青空を見上げ、これですよ、この青空ですよ、LAはいいなあ、と上着を脱ぎ、真綿のように体を包む太陽光線を愛でていた。当地に長年住んでいるわれわれはこの恵みを当然のこととして忘れがちだが、時にそのありがたさをあらためて思い起こし、十分に享受したいもの。
 今は南加といえども土は冷たい。バラも根元近くまで枝を払われ、裸同然で寒々しい。他の草木も青息吐息。枯れてしまったものもある。しかし、内部では外の冷気にしっかり耐え、力を溜め、満を持して春を待っている。春一番に咲く花ほど清潔で色っぽい力に溢れたものはない。柔らかい花びらなのに、触ると手が切れそうな勢いがある。見ているだけで、生命の力強さを受け取れる。凛とした姿。辺りを圧する生気。自然の中に精神性を見る日本人独特の感性かもしれない。いや、アメリカ人も同様だろう。その証拠に、皆、いろいろの花を前庭に植え、散歩する人の目を楽しませてくれる。他人に無償の喜びを与えてくれる行為だ。さあ、外に出て花を植えよう。咲いたら写真を撮って日本の姉に送ってあげよう。花が咲きました、北国も、もうすぐ春ですね、と。【萩野千鶴子】

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