領土問題に見る海外同胞の役割り

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 何とも重苦しい事態だ。8月10日に韓国の李明博大統領が竹島に上陸し、韓国領土をアピールした。従軍慰安婦問題の解決を再三提起しているのに一向に日本政府が対応しないことにしびれを切らせたという。14日には天皇陛下の韓国ご訪問に関し、大統領から極めて不適切な発言があった。引き続き15日には、香港の民間活動家たちが再三の警告を無視して尖閣諸島に向かい、魚釣島に不法上陸。韓国・中国と日本の間にはただならない緊張が生じている。
 領土問題は解決が難しい。領土は昔から国と国の武力で争われたからだ。近年はさらにさまざまな要素が加わる。漁業権、大陸棚権、海底資源、国防上の価値など。技術や交通の発達、国際情勢の変化により島の価値や存在意義が違ってくる。これらに国の威信や面子、国民の誇りや世論などが複雑に絡む。時の政府が国民の不満をそらすために外国に挑戦的になったり戦争を仕掛けた例は歴史上数多い。ロシアも北方領土を大統領が訪問し、各種の開発を進めたり、外資の導入を認めたりと活発だ。アメリカやヨーロッパの影響力低下とアジア諸国の台頭により、中・露の戦略的提携による圧力が政治的に不安定な日本に現れている。
 これを海外在留邦人や日系人の立場から見ると、日本の対応は歯がゆく見える。近隣には韓国人も中国人もロシア人も住み、ビジネス上の付き合いもある。同じコミュニティーの住民だから、母国同士がどのような状態であろうと日々付き合わねばならず、沈静化を願って見守るしかない。
 領土問題の解決には長期の時間がかかる。国と国の関係は永続的なものではなく、昨日の敵が今日の友になり、今日の盟友が明日の敵になることもある。母国同士が敵対関係になっても個人の友情は保てる。特に海外に住む在留邦人や日系人にとって、そのような国の友人を持ったり親戚関係になったりする例は多い。
 こうした個人の友情が両国の緊張関係に関わらず地下水脈のように続き、やがて雪解けを促す力となる日がやってくる。日本は確固たる長期の外交戦略を持つと共に、海外同胞のこのような役割を認識すべきである。【若尾龍彦】

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