メルローとニコレット

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 オバマ大統領がロムニー共和党大統領候補を抑えて、再選された。勝因については、急増するラティーノ票の71%がオバマ大統領に流れたとか、アジア系票が確実に共和党から民主党に流れ始めたとか、いわれている。だが、再選されたオバマ大統領もいつまでも勝利の美酒に酔いしれているわけにはいかない。来年1月には、「Fiscal Cliff」(財政の崖)が待ち構えているからだ。
 減税特別措置法などが期限切れになり、このままだと、「実質的な増税」と「強制的歳出削減」のダブルパンチを浴びて、政府は超緊縮財政を余儀なくされる。世界経済にも深刻な影響を与えかねない。こうした緊急事態になるのは、今回が初めてではない。2011年夏にも国債発行額の上限を超えそうになり、デフォルト(債務不履行)寸前になったことがあるからだ。
 当時、解決の糸口を探る大統領とベイナー下院院内総務(現下院議長)ら共和党指導者との密室協議の模様を描いた本がある。「ワシントン・ポスト」のボブ・ウッドワード記者の最新作「The Price of Politics」だ。エピソードの一端を紹介すると——
▼オバマ大統領は、ベイナー氏をホワイトハウスに招いて密議する。議長は、メルローを所望する。いざ飲もうとすると、大統領はアイスティーを飲む。ベイナー氏がタバコに火をつけると、大統領は禁煙促進剤のニコレットを噛む。同氏は後日談として、「まさに二人の見解の相違をシンボリックに表していたね」と漏らしている。
▼会談後、オバマ大統領は何度かベイナー氏に電話をする。居留守を使って電話に出ない。オバマ大統領は、怒りをあらわにする。「大統領である、この私が4回も電話かけたのにあの男は電話に出なかった」
▼「いい考えであれば、喜んで採用したい」という大統領の言葉を真に受けたカンター下院院内副総務(現院内総務)が赤字削減策の草案を手渡すと、大統領は、パラパラと見ただけで、「話にならんね。カンター君、(大統領選で)勝ったのは私だよ」。
 バラク・オバマという人物の「もう一つの顔」を見る思いがする。
 交渉は今度も難航しそうだ。【高濱 賛】

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