巳年を歩く、走る

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 「一日一万歩」は寿命を2年延ばすそうだ。経験から30分の速歩散歩で約5000歩になるのを知っている。会社勤めか家事で動いて、約3000歩。車を遠くに停めて歩く、階段を上るなどの工夫を合わせると、ほぼ目標に届く。今年はマラソンを再開した。
 数年前、還暦を前にして娘から5Kランに誘われた。これが運動オンチの私でも楽しかった。マラソン開眼。以来、ハーフマラソンを経て、LAフルマラソンを完走した。
 地獄の苦しみの後に味わった達成感は捨てがたい。勢いにのって東京マラソンに挑戦するも、これはあえなく半分で挫折した。悔しい。敗因はレースの前日に旅の疲れと重なり風邪をひいた事だ。日本の2月は寒い。おまけに当日は横殴りの雨だった。
 LAの温暖な気候に甘やかされた身にはこたえた。めげる。しかしノーベル賞受賞者、山中教授の京都マラソン姿に触発されて、今年から再開した。
 体を動かすと頭の中に風が吹きぬける。これまで迷っていたことも、大したことではなくなる。考えを集中させ、一気に結論を出して行動する。ほとんどゲーム感覚だ。判断を誤る事はあまりない。
 といっても、請求書を受け取ったら、即、支払うという小さな事でしかない。が、この小さな癖、ばかにならない。他の事全般に伝染する。
 まず、おっくうだった庭の雑草とりに手をつける。雨上がりが最適だ。ガンコな雑草が根まですーと抜ける快感がある。つめの中は真っ黒になるが土の匂いや感触、ミミズの姿、自然の営みを指先に感じるのがいい。命の原点に還れる。手は凍えても春を待つ胸の内はさくら色に染まって温かい。
 土を這う私に隣人が声をかけてくれる。笑顔で返す。ネット上で100人の友達との見えない会話もいいが、一人の目前の人間と話すほうがもっとよい。
 今年の干支のヘビは七福神の弁財天様の使いで金運アップの象徴とか。脱皮もする。それで巳年は、新しい自分に生まれ変わる人生の転機の年、なのだそうだ。
 日本も米国も転機だ。希望が見える。さあ、巳年を歩こう、走ろう。【萩野千鶴子】

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