命の選択

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 米国の人気女優、アンジェリーナ・ジョリーが両乳房の摘出、再建手術を受けたと公表した。
 母親は10年の闘病後56歳で亡くなっている。自身は実子、養子合わせて6人の子を持つ母親でもある。家族の病歴と、子供たちの成長を見届けたい思いから、乳がんのリスクを恐れたのだろう。
 検診の結果、乳がんリスクを高める遺伝子BRCA1に変異があった。乳がんリスク87%、卵巣がんリスク50%と診断された。対応策はいくつかある。全摘出ならリスクは5%に減る。
 彼女は予防のために命の確率にかけ、両胸全摘出を選択した。これが女性たちに衝撃を与えた。種の象徴である肉体の一部を失うショックは大きい。
 私は17年前に子宮がんを宣告され、子宮と卵巣を全摘出した。子供をさらに持つことは予定になかった。卵巣はがん化したとき、見つけにくいから、というドクターの勧めで両方を全摘出した。身体状況から即決した。術後、泣いた。何をどうするというわけではない。しかし、もう、女ではなくなったことが寂しかった。おそらく命をとりとめた、のだろうに。
 私の姉は聖職者の人生を選んだ。最初から女を捨てている。16年前に乳がんになった。右側を摘出した。彼女たちはかがみを持っていない。術後におそるおそる、ガラス窓に映した右胸を見た。
 「恥ずかしいけれど、涙が止まらなかった」
 と告白した。同じ体験を持つ女性は少なくないはずだ。
 米国立がん研究所によれば、乳がんにかかる女性は全体の12%。実に8人に一人だ。2013年は約23万人の女性が発病し、残念なことに、4万弱が命を落とすだろうと予測されている。
 一方、慶応大学医学部放射線科医師の近藤誠氏は「がんは放って置きなさい」という意見だ。
 どう対処するかは発病の年齢にもよる。若い時なら、がん細胞は猛威をふるう。アンジーのような思い切りがいる。50歳を超えれば、がんと共存する道もある。対処法については議論が絶えない。それほど難しい病気だ。常日頃から、がん宣告を受けた時の選択を考えておきたい。自分の命だ。【萩野千鶴子】

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