写真展を共同開催したプロデューサーのビチェブスカさん(左)と、写真家の森本さん

 ハーバーフリーウエー(110)の西、サンタモニカフリーウエー(10)の南に位置するわずか1・28平方マイルの小さなコミュニティー「ジェファソン・パーク」のビジネス活性化を目的とした写真展「Who Cares About Jefferson?」が3日、同地で開かれた。ラトビア人プロデューサーのイロナ・ビチェブスカさんと、日本人写真家の森本洋子さんの共同制作。
 会場には、ジェファソン通りでビジネスを営むオーナーら15人の人柄が伝わるパーソナル記事とともに、それぞれの写真が展示された。同地域には1960年代まで多くの日系人が住んでいたが、その後アフリカ系、ラテン系へと住民が変化していった様子なども写真から分かる。
 アリゾナ州立大学の特別研究員奨学金プログラムに参加していたビチェブスカさんは、ラトビアでプロデューサーとして15年の経験を持つ。ロサンゼルスには、同奨学金プログラムの一環で1カ月間訪問。アパートのあるジェファソン・パークに到着した際、ハリウッドやビバリーヒルズなどに象徴されるロサンゼルスとはかけ離れ、鉄格子付きのドアを前に「足がすくんだ」という。
 アパートでルームメイトとなったのは、インドやジャマイカなどを回り、貧しいながらも明るく生活する子どもたちの様子など、懸命に生きる人の撮影をしてきた日本人写真家の森本さん。ビチェブスカさんは到着の翌日、森本さんから自転車を借りアパート周辺を散策してみると、空手道場やサルサスタジオなどジェファソン通りの夕方は活気に溢れ、そこにコミュニティーが存在していることに気付いた。
 プロデューサー、写真家と職業は違えど、「自身の作品を通じて社会によい影響をもたらしたい」という2人の共通の夢を通じ意気投合したビチェブスカさんと森本さんは、ジェファソン・パークの活性化を目的に、鉄格子の付いたドアの向こう側にある「未知の世界」で懸命に働く人々に焦点を当てることを企画した。
 商店一軒一軒を回った2人がそこで学んだものは、日系、メキシコ系、アフリカ系、エルサルバドル系、グアテマラ系と、さまざまな国から皆大きな夢や希望を抱き、ここ、ジェファソンで家族のためそれぞれ懸命に働く移民たちの感動のパーソナルストーリーだった。
ジェファソン通りでダンススタジオを経営するバージニアさん(写真=森本洋子さん)

 「彼らの目の輝きは本物だった。写真の修正とか一切いらない。生き生きしていた」。かつてソビエト連邦の一部だったラトビア出身のビチェブスカさんは、「家族のため」「より良い生活のため」「子どもの教育のため」と、家族が懸命に働いて自身を育ててくれた生い立ちと共通点があると振り返る。
 一方神奈川県で生まれ育ち、在米20年になる森本さんは、昔この地に多くの日系一世が住み、懸命に働いていた歴史を学び、「多くの犠牲を払い、彼らがこの地で作り上げた努力や信頼といった土台のおかげで、今私たちがここで生活できる」。また、それぞれの移民がどのような夢を抱き、何を求めてジェファソンにたどり着いたのか、取材を進めるにつれ彼らのストーリーに引き込まれていった。
 写真展のタイトル「Who Cares About Jefferson」(=ジェファソンなんてどうでもいいじゃない)は、ビチェブスカさんが友人に同プロジェクトの話をした際、友人が発した言葉からきている。「これが一般の人の正直な意見かもしれない。でも、彼らが本当のロサンゼルス。夢を持って、家族のために懸命に毎日働いている本物の人。ロサンゼルスを支えているのは、著名人だけじゃないのよ」
 今回の展示会は一日限りだったが、これら写真はジェファソン通りにある各商店、およびウェブサイトで閲覧が可能。また9月にベニスでも展示を予定している。詳細はウェブサイトで確認できる―
 www.whocaresabout.org
【中村良子、写真も】

写真展開催に協力したジェファソン・パーク在住の仲間

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