家庭内暴力防止月間:アジア系専門家らが意見交換

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USCキャンパスで開かれたパネルディスカッション。右から、司会のムラッド教授、オー監督、脚本家のキムさん、アジア太平洋系センターのキムさん、リーガルエイド基金ロサンゼルスのリー弁護士

USCキャンパスで開かれたパネルディスカッション。右から、司会のムラッド教授、オー監督、脚本家のキムさん、アジア太平洋系センターのキムさん、リーガルエイド基金ロサンゼルスのリー弁護士


会場にはUSCの学生ほか、ソーシャルワーカーや専門家ら約70人が集まり、活発な意見交換が繰り広げられた

会場にはUSCの学生ほか、ソーシャルワーカーや専門家ら約70人が集まり、活発な意見交換が繰り広げられた


 ロサンゼルス郡アジア太平洋系家庭内暴力調査特別委員会(APIDVTF)は17日、全米家庭内暴力(DV)防止月間にともない、「iCare―家庭内暴力に立ち向かえ」と題した教育イベントを、南カリフォルニア大学(USC)で催した。
 会場には、USCの学生のほか、ソーシャルワーカーや専門家ら約70人が集まり、DVをテーマにした短編映画「マンデビラ(Mandevilla)」の上映と、関係者を招いたパネルディスカッションを通じ、アジア系社会にまん延する暴力の悪循環打破を目指し、各自何ができるかなどを話し合った。
 アンドリュー・オー監督、サン・キム脚本の「マンデビラ」は、DV撲滅キャンペーンのために制作され、韓国系移民ジョン・キムを主人公とするフィクション。
 —ロサンゼルスのアパートに住むキムは、毎日のように隣人夫妻の言い争いを耳にしていた。夫の妻に対する暴言や暴力が悪化する中、独りぼっちでいることの多い同夫妻の息子と仲良くなる。夫の暴力が激しさを増したある日、キムはその夫に立ち向かうべく隣人宅のドアを開ける。しかし、キムがそこで見た光景とは…、妻に暴力を振るう自分の姿だった—。
 脚本を手がけたサン・キム氏は、「自分は暴力的ではないし、DVとは関係ないと思う人が多く、直接的なストーリーでは関心を集めるのが難しいと思った。エンターテインメント性のある物語にすることで、一般の人にも登場人物と自分を関連付けてもらい、一緒にDVのテーマについて考えてもらいたかった」といい、DVは特別なものではなく、誰でも加害者、被害者になり得るものだと警鐘を鳴らした。
 また、しつけに厳しかった韓国系一世の父親のもとで育ったオー監督は、「映画を通じて人には皆『いい人』『悪い人』という二面を持ち合わせていることに気付いてもらいたかった」とし、あえて明確な流れにしないことで、「映画を観た人がDV問題を自身に問いかけるきっかけになれば」と話した。
 同映画はユーチューブで閲覧できる。英語の字幕付き。
同イベントを主催したAPIDVTFメンバーで、NAPAFASAの村上紘子さん(左)と、韓国系ファミリー・サービスのジェニファー・オーさん

同イベントを主催したAPIDVTFメンバーで、NAPAFASAの村上紘子さん(左)と、韓国系ファミリー・サービスのジェニファー・オーさん


 上映会の後は、USC社会福祉学部のデビー・ムラッド教授を司会に、オー監督、脚本家のキムさんに加え、アジア太平洋系センターのジェーン・キムさん、リーガルエイド基金ロサンゼルスのジョアンヌ・リー弁護士を招き、パネルディスカッションが繰り広げられた。
 ジェーン・キムさんは、DV被害者が感じる「恥」や、移民に多い言語の壁、また職業技術がなく虐待者に財政的に依存している状態やビザ問題などが弊害となり、被害者がなかなか友人や専門機関に助けを求めない問題を指摘。「助けを求めないからといって、それが助けが必要でない意味にはならない」とし、暴力の被害に遭っている人を知っていたら、専門機関の無料ホットラインなどを勧めるよう呼びかけた。
 さらに、被害に遭っている友人などから相談を受けた際は、相手を責めるのではなく、相手の言い分や気持ちを正当化してあげることが大切だとアドバイスした。
 リー弁護士は、家族法や移民法の視点から親権やビザ問題からDV被害者を守る活動をするリーガルエイド基金を紹介し、まずは相談してほしいと呼びかけた。
 APIDVTFが2012年に発表した調査結果によると、米国在住のアジア系女性のうち、41%から60%が一生涯のうちに肉体的または性的暴力を受けたことがあることが分かった。暴力にあった女性のうち、44・8%がその後何も対策を講じなかったと答え、家族に助けを求めた女性は34・3%、友人に助けを求めたのは32・1%、警察に通報したのは15・7%、専門機関に支援を求めたのは9%だったという。
 また、DVの被害者は女性に限ったことではない点も話し合われ、男性が被害に遭うケースも、また同性カップル間、親子間でも起こっているとその問題の大きさを指摘。「1人でも多くの人が自分にできることを考え、DV撲滅に向け行動を」とまとめた。
 詳細はAPIDVTFのホームページで―
 www.apidvtf.org
アジア太平洋系センターの24時間無料ホットラインは、電話800・339・3940。法律関係の問題を扱うリーガルエイド基金の日本語ホットラインは、電話323・801・7913。
【中村良子、写真も】

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