10年後の不用品

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 思い立って身辺整理を始めたところ、既に不用となった未使用品が次々と出てきて驚いた。
 まず現れたのは、写真用フィルム6本。日ごろから撮影することが好きで小型カメラを持ち歩き、切らすことの無いようにフィルムはいつも余分に購入していたのだ。長年使ったカメラが壊れたのを機にデジタルカメラに買い替えたのは、いつだったか。以来、フィルムは引き出しの中で忘れ去られていた。
 次に出て来たのは、包装のセロファンに包まれたままのカセットテープ。プレーヤーはまだ家の中に持っているが、ごくたまに再生用に使うだけ。最後に録音したのは何年前のことか。わが家でこれから出番があろうとはとても思えない。
 最後は、VHSビデオテープだ。ベータとの競争に勝って一時は世の中を席捲したVHSだが、DVDの登場で、今では録画手段としての地位を失ってしまった。
 フィルム、カセットテープ、ビデオ…。10年前にはどれもがわが家で活躍していたものが、今では私にとって不用の品となってしまい、世の中の変化の速さに驚くばかりだ。
 この調子で行けば、10年といわずに5年後には、また何か別の物が不用品となっていることだろう。
 ところで先日、電話帳の会社から「電話帳はお要りですか?」と問い合わせがあった。不要ならば配達しない。電話番号は自社のウエブサイトを利用して調べてほしい、という。自宅には電話を引かず、携帯電話だけ利用する人も増えた。各家庭に電話機があり電話帳があるという、長い間当たり前に思えた光景も、いずれ消えていくのだろう。
 この光景の消え行くと同時に、人の持つ能力も消えつつあるようだ。ボランティア登録するのに在学先の電話番号記入が必要となった学生に、ボランティア・コーディネーターが電話帳を手渡そうとすると、コンピューターを使わせてほしいと言い張ったのだという。「電話帳で番号を探しだす自信がないらしくて」と苦笑するコーディネーター。
 いやはや。10年もすれば、電話帳を使いこなす能力さえも不要・不用となるのかも知れない。【楠瀬明子】

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