東日本大地震を思い出させるフィリピンの台風被害は日ごとに犠牲者の数を増やしておりすでに死者4000人超という。近所の中国系フィリピン人の女性は被害に遭った家族を案じて帰国したまま未だに帰ってこない。
 自然は時に情け容赦の無いむごいことをするものだなどと話し合っていた日曜日、ダウンステイトは竜巻警報、シカゴは嵐の注意報が出ていた。
 昼過ぎには予報どおり突風と雷雨が30分ほど続き、後は薄日まで差し始めた。シカゴでは一過性の豪雨を降らせただけの嵐は、その前にイリノイ州ワシントンを、スケールEF4という記録的な竜巻で襲っていたのだ。
 普通竜巻は3月から5、6月に多くて、春の季語である。11月に竜巻が起こらないという保障はどこにもないが、非常に珍しい。
 これだけの大型竜巻に襲われながら死者が8人と少なかった理由を「信仰のお陰ですよ」と言った人がいる。つまり日曜日で教会に行っていた家族が多く、教会関係者の誘導で安全な場所に避難できたというのである。なるほどキリスト教が生活の根底にある国らしいが、もう一つの話題のほうが私には納得しやすい。
 竜巻の襲来を知らせる警報のサイレンが鳴り響いたとき、「ママ、すぐに地下室に避難するんだよ」と言ったのは6歳の男の子だった。ところが母親と兄は「まだ大丈夫」とのんきに構えていたが「だめだよ。こんなときはすぐ地下室に逃げなさいって学校で教わったんだもの」と、この少年が家族を地下に避難させた直後、竜巻がこの家を巻き上げて地上に叩きつけた。家屋は跡形も無くなったが、家族は無事だった。6歳の子供が家族を救ったのだ。滅多に起こらない11月の竜巻を大人は甘く見たのかもしれない。
 竜巻の被害の多い地域では学校や地区ごとに避難訓練が行われるが、問題は注意事項を素直に守って実行するかどうかである。
 大人は私も含めてとかく横着で、素直に他人の忠告に耳を貸さないことが多い。どんなに科学が発達しようが人間が利口になろうが、まず謙虚になれという教えだろう。
 自然恐るべし。【川口加代子】

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