消費者泣かせの制裁金

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 「花は桜木、人は武士」とか—。このあとに「柱は檜、魚は鯛、小袖はもみじ…」と続く。一休宗純禅師の言葉とされているが、諸説あり真偽は不明。
 それはともあれ、暖かくなって桜の開花シーズンになると、なぜか日本人の血が騒ぐ。首都ワシントン河畔では日米友好のシンボルとなっている恒例の「全米桜祭り」も始まり、4月13日までの期間中、日本文化を紹介するイベントでにぎわう。
 桜で思い出されるのが、誰でも知っている「ワシントンの斧」のはなし。ジョージ・ワシントンが子供のとき、桜の枝を折ったことを父親に正直に話したら、かえって褒められたという逸話だ。
 これはワシントンの死後に子供向けに書かれた「嘘をついてはいけない」という教訓のための作り話。なのに小学校の教科書にも載っているから、本当にあった話と思い込んでいる人がいても責められない。
 悪いことをしてしまったら、自ら名乗り出ることは潔い行為とされている。ましてや法に触れる犯罪行為なら「よくぞ自首した」として、刑を軽減してもらえるほどなのだ。
 同じ悪事でも、このところ目立つのが経済がらみの不正。カルテルを結んで価格操作、生産量の調整、談合による入札などといった独占禁止法に違反する行為が次々と明るみに。企業が払う制裁金、罰金の額も半端ではない。1社で数億ドルにおよぶなんてザラだ。
 こうした背景には世界各国で導入されている「リーニエンシー(leniency)」制度がある。これは談合やカルテルなどの不正に関与したことを自主申告すると寛大に扱われ、刑罰が減免されるという制裁措置の減免制度。
 不正行為が摘発される前に申し出て、正直にすべてをゲロすれば自身の罪は減免されるとの「自首」システムはいかがなものかと思うが、巧妙化する不正行為の拡大を防ぐ効果はあるようだ。
 交通違反チケットの支払いにさえオタオタするような身には、罰金数億ドルだ、などと言われてもピンとこない。巨額の制裁金をすんなり払えちゃうあたりが大企業の凄いところか。でも、そのツケは、結局は製品の値段に転嫁されるわけだから、消費者泣かせの制裁金。お花見気分で、感心ばかりもしていられない。【石原 嵩】

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