春風が吹き始めてまた日本へ渡って来たところ、日本での拠点にしている住居の冷蔵庫が故障して使えなくなった。購入してまだ数年。買い替えよりまずは修理をと、製造メーカーH社の「アフターサービスに関するご相談」という電話番号を見つけて連絡を取ってみた。
 祝日だったので心配したが、電話口に受付担当者が出てひとまず安心。故障の様子を説明すると、翌日には修理担当者が来てくれることになった。何日もかかることを覚悟していただけに、これにも救われる思い。
 翌朝早く修理担当者から、訪問予定時間を知らせると共に冷蔵庫の状態を再確認する電話が入った。「庫内で点滅している小さな緑の灯は、ひとサイクルにつき何回点滅しているか」の問い合わせ。13回との報告を前日受けたが、その数字と冷蔵庫の状況が合致しないので、もう一度数え直してほしいという。夫が再度数えて14回だと告げると納得した様子で、該当部品を持参するとのことだった。
 チカッチカッと点滅する灯は実は、冷蔵庫のどこが故障しているかを告げているのだという。部品の取り換えは、外から冷蔵庫上部のパネルを開けてのモジュール(制御装置)入れ替え。まるで開頭手術のような作業が終わると、冷蔵庫はすぐに動き出した。知らない間に大きく進化していた冷蔵庫の仕組みに驚き、連絡してから24時間以内に修理の終わるサービス体制に感心し…と、久しぶりに日本の家電事情に接しての、びっくり体験だった。
 ところがびっくりしたのは、私と夫だけではなかったらしい。帰り際に台所内を見まわした修理の男性が、「えっ、信じられない」と声を上げたのだ。見つめていたのは、昔ながらのT社製電気炊飯器。私たちが渡米するにあたり1970年代に実家に預けた荷物の中から、数年前、両親が送ってくれたのだ。「川崎にT社の博物館があってこれと同じ物を展示してますが、まだ実際に使っている家庭があるとは…」。よほど驚いたらしく、「博物館に連絡してみては」とも。
 わが家の冷蔵庫騒動は、新旧の驚きを巻き起こして終了した。【楠瀬明子】

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *