歌麿の雪月花3部作

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 箱根に新しい美術館が誕生し、これまで所在不明とされていた喜多川歌麿の晩年の大作「深川の雪」が修復・展示されるというので出かけた。
 箱根山中の国道1号線沿い、小涌谷のホテル跡に昨秋新築完成した5階建ての岡田美術館は、日本・朝鮮・中国といったアジアの陶磁器や絵画などの美術品を収蔵。パチンコ・スロット機器製造で財を成し、日本の高額納税者番付で1位になったこともあるという実業家、岡田和生氏が蒐集したものを保管・展示する美術館だ。同氏はまた、ラスベガスの大手ゲーム・カジノ企業ウィン・リゾーツにかつて4億ドル以上を出資していた人物でもあるらしい。
 芸妓宿を描いた「深川の雪」は、飯盛り宿の「品川の月」、遊郭の「吉原の花」と共に、雪月花3部作として知られる。縦6フィート×横11・5フィートの巨大な画面に、芸妓や子供ら総勢27名の人物が生き生きと描かれ、歌麿肉筆画の最高傑作とされるのも肯けて、しばし見入った。
 それまで江戸幕府は、絵を通して幕府が揶揄されていると疑っては度々、歌麿の活動に制限を加えている。この3部作は、「世を乱す者」として歌麿がついに手鎖50日の刑にあった後、栃木滞在中にかの地の豪商に依頼を受けて制作したと伝えられるもの。手鎖の刑も、歌麿の描く意欲を奪うことは出来なかった。
 雪月花3部作はその後、明治期にフランスのパリに流出。「深川の雪」のみは日本人浮世絵収集家によって購入され1939年に日本に戻ったものの、1948年の国内展示の後は行方が分からなくなっていたという。
 現在、「品川の月」はワシントンDCのスミソニアン博物館群のひとつであるフリーア美術館に、「吉原の花」は全米最古の公立美術館とされるコネティカット州ハートフォードのワズワース・アシニアム美術館に収蔵されている由。
 岡田美術館での「深川の雪」一般公開は6月末で終了したが、東洋美術に関心ある人には興味深い美術館なので、箱根観光のついでに立ち寄ると半日楽しめる。館内を巡って歩き疲れたら足湯でゆっくり休むことが出来るのは、温泉地・箱根ならではのことだろう。【楠瀬明子】

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