ミシガン湖畔のお月見

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 「お月見しませんか」
 三世の友人TさんからEメールが届いた。
 お月見ねえ。渡米44年になり、44回目の秋を迎えたが、あらためてお月見をしようなどと考えたこともなかった。
 アメリカ人に日本の四季の行事など説明するときには、「日本では仲秋の名月の夜、芒(すすき)を飾り、お団子をお供えして月を観賞する行事がある」などと話してみても、実際にはそんな悠長な時間も無ければ、なんだか浮世離れのした話で、残業で遅くなってオフィスを出たときに、たまたま夜空を見上げると、運よく満月に出会い目の保養をすることもあるが、うろうろしている間に月は欠け始め、半月になり…という日々の繰り返しが44年である。
 そういえば何年か前にもお月見の話が出て、立ち消えになったことがあった。
 今回なぜか彼女はお月見に執着しており、知り合いにEメールを送り出欠を確かめ、車でミシガン湖岸をドライブして会場を探し、念のために天文台に電話で月の出の時間を確認、天候もチェック、日本から来たRさんが「お団子を作ります」と言い出して話は本格的になってきた。
 当日ハーバー近くの会場に集まったのは10人。ピクニックテーブルに持ち寄りの一品を並べ、月の出を待つひと時、月より団子で食事を始めてしばらくすると「出ました!」 波の静かなミシガン湖の沖合いに顔を出した大きな月が、少しオレンジっぽい色でお目見えしたと思うとどんどん上昇。
 「上り始めると早いね。地球の回転が速くなったのかな」「月が地球の周りをまわっているんだろ?」
 みんなもう一度小学生に逆戻りしなければならないようだ。
 食事が片付けられ、Rさん手作りのお団子が供えられ、その上、持参のポットのお湯で即席のお茶席が開かれて薄茶のお点前までいただいた。
 自然の移ろいに則した日本の行事を知る日本人も、祖父母から聞き伝えだけで知らない三世も、中空に上ってゆく月と、湖面に砕ける月影を満喫したひと時。
 世話役のTさんに心からお礼を言って「また来年も集まろう」
 どうやら恒例行事になりそうです。【川口加代子】

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