アクアモーション

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 主治医の勧めもあって、週に3回、朝8時から1時間、YMCAのアクアモーションのクラスに通っている。文字通り、水中での運動。平たく言えば、水中でNHKのラジオ体操をやっているようなものだ。地上では頑なに動こうとしない筋肉も水中では嫌がらずに動いてくれる。1時間後、心技体が本当にリラックスする。不思議だ。
 インストラクターは女性3人が交代で務める。一人は黒人女性だ。クラスは20人くらい。ほとんどが中高年の白人女性で、男は私を含めて二人か三人。
 顔見知りになった元小学校教師の女性は、「毎日、水の中で体を動かさないと体がしゃきっとしないのよ。あなたも一度始めたらやめちゃダメよ」と先輩らしいアドバイスをしてくれた。
 クラスは、最初はプールを行ったりきたり。そのあとは伸縮運動や跳躍運動。「ヌードル」と呼ぶ浮きを使った足腰の運動。時には皆童心に帰ってキャッキャ、キャッキャ言いながらバレーボールまがいのパスもやる。
 日常生活で中高年女性、とくに異人種の女性たちと接することはまずない。その意味ではこのクラスは私のような職人ジャーナリストには貴重な取材現場だ。クラスのあとに日常茶飯事の話から、ときには政治経済に関する彼女たちの生の声も聞ける。
 プールといえば、かつてシエラ・マドレに住んでいた二世のご老人の話を思い出す。
 「市営プールで日系人の子供たちが泳げるのは金曜日の夕方だけだった。わしらが泳ぎ終わったあとに水を替えるんだよ。子供心にも畜生、って思ったもんだ」
 白人女性たちと和気あいあい、アクアモーションを習っている、日本からやってきた新参者たる自分。水中に潜ると、くだんのご老人の言葉がどこからともなく聞こえてくる。時は流れ、アメリカも大きく変貌した。あらためて実感するモーメントだ。【高濱 賛】

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