天国の大横綱と祝福を

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 豪快な投げ、速攻の寄りで完勝する。いつも、気持ちのいい勝ちっぷりを見せてくれる横綱白鵬が、不滅と思われていた大鵬が持つ通算最多優勝32回に並んだ。「ついに」というよりも、29歳での快挙は、前人未到の記録よりも、どこまで伸ばすのかという、その先が気になってしょうがない。
 白鵬は、大鵬からは四股名の一字をもらっただけではなく、稽古の重要さや横綱の在り方などを学び「角界の父」と慕う。偉業に到達した際に「言葉にならない。一生忘れられない」「約束と恩返しができた」などと、感慨深げに泣いたのはそのためだ。恩人の遺志を尊重するのは、土俵のみならず、大鵬が生前に行った献血運搬車の寄付(約40年間で計70台)も受け継ぐ。この「大記録」にも追い付いてもらいたい。
 特有の相撲用語が数ある中で、白鵬を象徴する一語を紹介したい。「懐が深い」とは、一般では「心が広く、包容力がある」のに対し、角界では、腕と胸の空間が大きく、相手になかなか回しを取らせないことを意味する。白鵬は、これら両方を持ち合わせる希代の力士だ。下位の者に厳しい稽古を付ける一方で、土俵を離れると、優しくて面倒見がいい。家族とファン、後援者を大切にし、母国モンゴルと日本を愛する。稽古熱心の相撲に対する姿勢は言うまでもなく、礼儀正しく、敬意を払い、生活面での心構えなどは、日本人よりも遥かに上だろう。見習いたい。
 正攻法で圧倒する勝ち方を「横綱相撲」と呼ぶ。白鵬の相撲は、まさにそれだ。賜杯を抱く姿は誰よりもかっこよく、他の力士の祝勝会を見ると、違和感を覚えることもあるくらいだ。盤石な相撲を取ったとしても「まだまだ、これから」「一番一番を大切に」など、淡々と受け答え、気を引き締める姿は、王者の貫禄そのもの。
 大鵬の全盛期を、みなさん読者の多くが知っており、このたびの白鵬と合わせて、人生で2度も大横綱を見ることができ羨ましく思う。白鵬の大記録樹立の瞬間を、次の初場所で見ることができるかも知れない。天国の大横綱とともに、歴史的な快挙を見守って、祝福したい。【永田 潤】

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