Dance 4 Oceans:報道されない福島の「声」

0

ドキュメンタリーで現状学ぶ

日本にいるアッシュさんとスカイプを通じ質疑応答をする参加者

日本にいるアッシュさんとスカイプを通じ質疑応答をする参加者


 日本在住のアメリカ人映画監督イアン・トーマス・アッシュさんが、東日本大震災の福島第一原発事故後、県民たちの現状を取材したドキュメンタリー映画「A2―B―C」が2日、サンペドロで上映された。主催は、海の汚染問題を訴える草の根団体「Dance 4 Oceans」(カナ・ジョーンズ代表)。

 会場には、環境や原発問題に取り組む活動家や一般市民など老若男女約70人が集まった。映画を通じ、メディアで報道されない住民が直面する問題を学ぶとともに、「福島だけの問題ではない」と、各自できることを自問する貴重な機会となった。
 ジョーンズ代表は、原発事故以来、甲状腺ガンと診断された子どもが福島県内だけで104人に上ることや、福島第一原発から漏れた放射線量がこの3年間で1986年のチェルノブイリ原発事故の線量を11%上回ったとするジャーナル・ネイチャーに掲載されたデータ、また震災後に避難生活などによるストレスなどで亡くなった人が1656人に上り、震災で亡くなった1607人を上回ったデータなどを読み上げ、「震災や原発事故は過去のことではなく現在も続いており、状況は悪化する一方」と、イベント開催の趣旨を説明した。
 映画は、震災から11日後にアッシュさんが福島で暮す人の生の声を拾ったもの。政府が「安全」を強調する中、部分的にしか行われない除染作業、学校の脇から検出される高い放射線値、道端の草花に触れられず、身に付けているガラスバッジを指さし「放射線を計るもの」と説明する幼い子、そして、子供たちに発症した甲状腺異常とその現実に向き合い、不安を抱える母親たちの姿があった。
 涙を流しながら映画を見たステラ・クルズさんは、「映画に登場した親子に自分とわが子を重ねた」といい、「国民を守るべき立場にある政府のひどい対応に言葉を失った」と話した。また、映画内で母親が泣きながら「私たちは怒ってもいいんですよ」と発言していた部分に触れ、「これだけの被害にあっていながら、皆とても礼儀正しく話していたけれど、彼女の言う通り」と述べ、自身にも何ができるか考えたいとした。
 震災前から原発問題に関心があったというデイブ・ルービンさんは、「福島から漏れた放射能はすでにこちらに到達している。世界中にこれだけの原発があることを考えると、同じことがどこかで起こる可能性は十分にある」と警鐘を鳴らし、「これを機に、多くの人が原発の危険性を認識してほしい」と話した。

福島の近況を報告するパネリストの(右から)ベバリ・フィンリー・金子さん、金子祐仁さん、洋子コリンさん、美樹ベイさん

福島の近況を報告するパネリストの(右から)ベバリ・フィンリー・金子さん、金子祐仁さん、洋子コリンさん、美樹ベイさん

 上映後は、日本にいるアッシュさんをスカイプでつなぎ、NPO「Families for Safe Energy」のベバリ・フィンリー・金子さんと夫の祐仁さん、原発問題に不安を持つ市民代表の洋子コリンさん、反原発活動家の美樹ベイさんをパネリストに迎え、質疑応答が行われた。
 最近福島を訪れた金子夫妻は現地の最新情報として、「映画の時と状況は変わっている」といい、街にはマスクをしたり、ガラスバッジを持つ子どもの姿はなく、店には地元で捕れた魚などが豊富に並んでいたという。
 福島第一からは現在も放射能が漏れており、いまだ福島など東北産の食材輸入を禁止している国があるにもかかわらず、政府の方針で学校給食では東北産の食材が使われていると説明。また、べバリさんが学校の横で放射線値を計測したところ、胸の高さで横浜の9倍、地面では11倍もあった事実などを紹介した。
 アッシュさんはこれに加え、風評被害につながるとして、放射能や子どもの健康を心配する親へのいじめが横行し、正直な気持ちを言えない親が増えていると話した。また、映画に登場した母親からの強い要望で、映画をネットに流さないこと、DVDにしないことを約束したため、このようにプライベートな上映会でしか披露できない現状を説明。現在までに24のフィルムフェスティバルで上映されているが、集まる人はもともと環境や原発問題に関心のある人ばかりで、一般の人の関心をどのように引くべきなのかが今後の課題とした。
 観客からの質問の中には、「日本人は母国のことなのに、なぜ現実を見て見ぬふりをするのか」などといった厳しいものもあった。アッシュさんは、「この問題には簡単な答えがない」といい、「何もせずに政府のせいにするのではなく、国民一人ひとりに意見を言う権利があるのだから、国民が声をあげて政府を動かすべき」と意見した。
 イベントを主催した「Dance 4 Oceans」は映画上映会をはじめ、講演会やビーチ清掃などを通じ、海の汚染問題を訴える活動をしている。詳細は、電話310・947・4999または、
 dance4oceans@gmail.com
ウェブサイトは―
 www.dance4oceans.wordpress.com
【中村良子、写真も】

Share.

Leave A Reply