最も愚かなものなのか?

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 群れを成してアフリカ大陸を1000マイルも大移動するヌーのような野生動物、ツバメやハクチョウのような渡り鳥、大洋を自在に回遊するマグロのような魚類にとっては、いわゆる国境という概念は存在しない。もちろん、パスポートも必要ない。
 国境線は、人類が便宜的に策定した最も愚かなもの、と皮肉を込めていわれる。確かに、上空から地上を見ても、国境という線は見当たらない。言われてみれば、正にその通りなのだが、実は、その線をどこに引くかで、人類は有史以来、懲りもなく争いを続けてきた。今でも続けているのは周知の通り。
 人間社会の現実をみれば、国と国を分ける境界線が必要なのは誰にでも分かる。その国境線を通過するには、多くの場合、パスポートが必要で、査証が必要なことが多い。しかし、そうした決まりを無視して、国境を通過する人が多いのも世界の現実。
 身近な例では、アメリカに不法入国し、そのまま滞在してしまう人が推定1200万人もいるとされる。半端な数じゃない。その多くはヒスパニック系といわれるが、彼らには特段、法を犯しているという罪の意識が薄いようにも見える。
 そう思える一つの現象が、カリフォルニア州で採用された「不法滞在者にも運転免許証を発行する」との施策に、移民法に違反している「犯罪者」が臆面もなく、次から次へと免許申請に現れていることだ。
 不法滞在は、拘束されれば強制送還となり、10年間は再入国が認められない重犯罪。それでも、州の車両局と連邦の移民帰化局は別個の組織ということで、逮捕されることがない。おかげで車両局は混雑して、通常業務に差し障りが出ている始末。
 ヒスパニック系の不法滞在者を2人雇っている知り合いのガーデナーが、「今まで送り迎えをしていたが、彼らが運転免許証を取ったので、もうその必要がなくなり楽になった」と喜んでいたのが、アメリカ社会の現実を象徴している。陸でも空でも海でも、自在に移動できる動物たちが羨ましい。【石原 嵩】

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