ケンタッキーでの3・11

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 今年2月半ばから3月初めのケンタッキーは、例年にない大雪と異常な寒さで、私の滞在していたレキシントンでは大学が計2週間も休校となる始末。それでも、何日も積もっていた庭の雪がようやく解けると翌日にはクロッカスが花開き、雪の下でも春の準備が着実に進んでいたことに驚かされた。
 「町の劇場で、大震災4周年を記念した行事があるらしい」と聞いたのは、クロッカスの咲いた日だった。どういう内容か見当のつかないままに劇場ウエブサイトで日時を調べ、「トゥルーソングス」と題された催しに出かけた。
 100年近い歴史のケンタッキー・シアターで3月11日の夜行われたのは、「ほんとうのうた 朗読劇『銀河鉄道の夜』を追って」と題されたドキュメンタリー(河合宏樹監督、英語字幕付き)の上映だった。朗読劇出演者の一人である詩人、管啓次郎さんの出席もあり、主催は地元ケンタッキー大学のジャパン・スタディーズ・プログラム。会場には大学関係者が多いらしかった。
 東日本大震災直後、「被災地のために出来ることは何か」と居ても立ってもいられなかった、管さんと作家・古川日出男さんの熱い思い。その思いの実現手段として、岩手出身・宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』を震災後の視点から古川さんが戯曲化。これを各地で公演した2年余りの記録が、朗読劇の進行に織り込まれて目の前に繰り広げられた。
 予備知識無くこの「震災4周年行事」に出席した私には、意外な内容だった。が、鎮魂と希望とを込めて朗読劇に取り組んだという思いの強さと、自然の脅威または大きなものの意志の前にひれ伏さざるを得ない人間の脆さは、十分に伝わって来た。
 同夜のゲスト、管啓次郎さんとの質疑応答では、復興か保存かという被災地の選択課題や、巨大防潮堤建設への疑問などが触れられた。また、朗読劇に終止符を打った自身のこれからについては「詩人である私は詩を通じて支援を続けたい」とも語った。
 激しい揺れに感じたあの日の恐怖や、友人を津波で失った悲しみが私に蘇った夜。ケンタッキーで大震災に再度向き合い、私もまた自分に何が出来るかを考えたのだった。【楠瀬明子】

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