先人たちの経験や思いは着実に若い世代に語り継がれている。そして、これからもそうあって欲しいと願う今年の夏―戦後70年。
 2001年の夏を過ごしたハワイのカウアイ島。日系2世のライフヒストリーを後世に残していく大学のゼミに参加し、沖縄戦で米軍の通訳兵だった日系2世のおじいさんと、沖縄戦で従軍看護婦として働いたのちアメリカに帰化したその奥さんと時間を共にした。
 沖縄戦時下いかに悲惨な状況だったか、米兵となり日本と戦わなくてはならなくなったその複雑な心境や背景など、たくさんの話を聞かせてもらった。その最中の9月11日には世界同時多発テロが起き、空港は閉鎖。語られた過去の戦争の話が現実味を帯びた。その後、アメリカはイラク戦争に突入。戦争は他人事ではないと初めて悟った。
 この2人の日系人との出会いがきっかけとなり、私は日本の報道現場で働き始め、毎年夏になると終戦企画に取り組むようになった。
 LAでも印象的な出会いがあった。沖縄戦の時代を生きた南加沖縄県人会の國吉信義会長(79)。「私は自分のことをオキナワン・アメリカンと思っている。沖縄、日本、アメリカの3つのアイデンティティーを持っているからこそ、沖縄人、日本人、アメリカ人に伝えられることがある」と使命感を持って若者と接する。
 その思いを受け継ぐのが、4世のジョーイ・カミヤさん(28)。戦後70年を機に、沖縄戦について学ぶ勉強会を始めた。戦争を経験したメンバーに話を聞いたり、インターネットをつかって前沖縄知事に講演をしてもらったり。「直接話を聞けるチャンスはもう残り少ない。同じ悲劇を繰り返したくないから4世、5世たちに伝えていきたい」と熱く語ってくれる。
 日本で生まれ育った私が、アメリカ日系人の経験から学ぶことはあまりに多い。これからも、彼らの経験や言葉から何を学び、それを日系人、日本人を問わず若い世代にどう伝え、どう問題提起していくのか。それを考え、実践していくのがいま羅府新報で日系人とともに働く私のミッションなのかもしれない。【中西奈緒】

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