米入国税関管理局(ICE)は8月31日、南カリフォルニア地区で4日間にわたる不法移民の一斉検挙を実施した結果、244人を逮捕したと発表した。

 検挙の対象となったのは、犯罪歴があり、公共の安全を脅かす恐れがある不法移民。身柄を拘束された244人全員に犯罪歴があった。
 ICEによると、27日に終了した一斉検挙で拘束された不法移民の56%は、武器の所持や麻薬の密輸、幼児への性的虐待や性犯罪などの重罪で逮捕歴があり、残りの44%は、複数の軽犯罪を犯していたことが分かったという。
 また4人に1人は過去にも米国から本国に強制送還され、連邦地検に起訴されていた。
 今回検挙された不法移民はメキシコからがもっとも多く191人、エルサルバドルが18人、グアテマラ10人、ホンジュラス4人、コロンビア4人、ペルー2人。中央アメリカ諸国のほか、フィリピン2人、タイ2人、フランス1人、ガーナ1人など21カ国から米国に流入していた。
 逮捕された不法移民がもっとも多かったのがロサンゼルス郡で99人。次いでオレンジ郡の55人、サンバナディーノ郡43人、リバーサイド郡24人、サンタバーバラ郡20人、サンルイスオビスポ郡の3人だった。
 今回の一斉検挙は、連邦政府と自治体の不法移民の取り締まりの違いが、ある事件をきっかけに浮き彫りになったことが発端となっているという。
 今年7月、サンフランシスコの観光地「ピア14」で、32歳の女性が射殺される事件が発生した。不法移民の男が殺人容疑で逮捕されたが、過去に麻薬犯罪などに関与した容疑で複数の逮捕歴があり、強制送還の対象にもなっていたことが、その後の調査で明らかになった。
 男は今年4月にもサンフランシスコ市警察に逮捕され、強制送還の対象になっていたが、連邦当局に通知されることなく当局は釈放していた。背景には同市がロサンゼルスやニューヨークなどの主要都市と同じく、「サンクチュアリ・シティ(聖域都市)」として移民に寛容な政策をとっていることが影響しているという。事件はその2カ月後に発生した。
 ICEの広報担当官のバージニア・カイス氏は「われわれが直面している困難のひとつが、自治体と連邦の不法移民に対する方針の違いにある。逮捕された多くの不法移民はICEに身柄を引き渡される代わりに、自治体が町中に返しているのが現状だ」と話している。
 2014年度、ICEは10万2224人の不法移民を検挙し、強制送還措置をとっている。

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