敬老売却問題:初のコミュニティー集会【下】

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ボードメンバーのゲリー川口氏に説明会を要求

 ボードメンバーのゲリー川口理事長(奥)に質問をするデビット・ワタナベ氏(手前)


ボードメンバーのゲリー川口理事長(奥)に質問をするデビット・ワタナベ氏(手前)

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「どうして2年前にできなかったのか」—悔しい思いを主催者も参加者も抱きながら、敬老の売却問題をめぐって日系コミュニティーは立ち上がった。彼らはまだあきらめてはいない。長く敬老に関わってきた医師たちや臨床心理士、そして、多くの参加者が声をあげ、敬老のボードメンバーのゲリー川口氏に説明会の開催を要求し、元州下院議員のウォーレン古谷氏もそれを促した。【中西奈緒(写真も)、モニエ中地美亜】

「今日参加してくださっているみなさんが誹謗中傷などの発言をせずに、礼儀正しく、お互いを尊重しあって対話することを期待しています」という中川牧師の言葉ではじまった初のコミュニティー集会。会場のセンテナリー合同メソジスト教会にはおよそ150人が集まった。集会では医師たちや臨床心理士、敬老の住居者家族といったパネリストからのスピーチのあと(1回目のリポート【上】参照)、会場からは質問や意見があふれ出た。
オバマケアが敬老にどんな影響を及ぼすのか、もっと早くに集会を開くことはできなかったのだろうか、どうしたら売却を止められるのか、サポートしてくれる弁護士はいないのか、陳情書を集める際にソーシャルメディア使って若者も取り込んだらどうか、もっと多くの人がこの状況について知るべきではないか、ボードは新しい管理者を雇うべきではないか、などとの声があがった。

後ろの席に座って話を聞き、メモと取るボードメンバーの理事長、ゲリー川口氏

後ろの席に座って話を聞き、メモと取るボードメンバーの理事長、ゲリー川口氏

フロア席にはボードメンバーの理事長、ゲリー川口氏の姿もあった。後ろの席にひっそり座って話を聞き、メモと取っていた。後半にマイクを取ることになるまで、参加のほとんどは彼の存在に気がついていなかった。
ある女性の問い「法的に全てのボードメンバーをクビにすることはできないのだろうか」に会場は盛り上がり、川口氏も驚きの表情を見せつつも笑っていた。
母親が以前敬老の入居者で、今まで多額の寄付をし、ボランティアもしてきたヘレン・フナイ・エレクソン氏は「ボードはみんなお金持ちで敬老に多く寄付をしてきてすばらしい心の持ち主だと思っている。なのに、どうして集会を私たちのために開いてくれないのか、まったく納得がいかない」と述べ、不動産ブローカーのトム・オカベ氏は「エスクローは相手の支払いが済むまでは止めることができるものだ。まだ時間はある」と希望を示した。

意見を述べる元州下院議員のウォーレン古谷氏

意見を述べる元州下院議員のウォーレン古谷氏

同じくフロア席にいた元下院議員のウォーレン古谷氏も発言をした。「いまシアトル、サンフランシスコ、サクラメントは日系だけでなくアジア人が集まってアジア人コミュニティーとしてのアイデンティティーが強くなってきている現実がある。しかし、日系人のためにできた敬老の重要性は疑いようのない事実。敬老だけでなく、JANM、JACCCなど、日系社会は変化してきていて、政府からの資金も減っている。いまどこの組織でも同じようなことが起っている。ボードメンバーとこれから会って話をするつもりでいる。ボードは敵ではない、彼らをコミュニティーの味方に付けていくことが大切だ」

参加者の前で話をするゲリー川口氏

参加者の前で話をするゲリー川口氏

ウォーレン古谷氏が話を終えると会場の緊張感も少し和らぎ、彼に促されるようにゲリー川口氏は席を立って前に出て自己紹介をした。会場からは驚きともどよめきともいえる声があがった。彼が会場にいたこと、彼がボードメンバーのトップである理事長であることを知らない人が多かった。
「僕は今日みなさんの話を聞きにきたわけで、質問に答えるつもりできたわけではない。それをしたら一晩中かかってしまう。話を聞いていて、みなさんがとらえている事実は違っていることも多い。今回の決断は経済的な理由だけによるものではない。私たちはボードメンバーとして敬老の資産を残すために、未来のために決断した。この売却はしばらくの間は人々に痛みを伴わせるものになるかもしれないが、将来の状況はよくなると思っている。今後、なんらかの方法で、みなさんの質問に答えることができるように、コミュニティーと対話できるようにもっていきたい」と話しつつ、敬老のホームページに情報があるから見るように促すと、会場からはブーイングが起きた。

最後に、ウォーレン古谷氏はゲリー川口氏に諭すように語りかけた。「ゲリー、ひとつクリアなメッセージは、みんなはボードとのミーティングを望んでいるということなんだ。そうすれば誤解をとくこともできるかもしれないし、人々が意見を述べることもできる。きちんと会話し、コミュニケーションをとっていくことで、すべての問題は少なくなっていくだろう。あなたがそうしないと状況は悪くなるいっぽうだ」。会場からは大きな拍手が沸き起こった。

参加者はゲリー川口氏の話しに耳を傾ける

参加者はゲリー川口氏の話に耳を傾ける

川口氏は会場を出ると筆者のインタビューに歩きながら答えた「僕が持った今日の印象は、彼らはすべての事実を知らないことと、間違ったことも言っていた。これだけの人数が集まったことには驚いてはいない。僕が何を言おうと聞いてくれないと思っていたけれど、今日の人たちは耳を傾けてくれた。集会を開くかどうかは、まだ約束はできないけれど、今日のことをCEOのショーンと他のボードに伝えて、話し合いをして決めたいと思っている」

ある住居者の家族は、最後に川口氏に声をかけたー「来てくれて感謝している。1人で泥をかぶると分かっていて。あなたは勇敢だ」

◎参加者の声

引退者ホームに去年入居した山崎勝男(84)さんは「たくさんの人が関心を持っているということが分かった。ただ、一般的で初歩的な話が多いと感じたので、もう少しアクションを起こすことができるレベルの知識をみんなで持つことが大切だと思った。あと、法律に詳しい人が関わるべきで、現時点ではこの契約は成立してしまうのではないかと思う。それをなんとか覆すためには法律の専門家や、アクションを起こす能力を持った人、組織力を持った人、行動力のある人が必要。今日の先生たちは頭の中では十分にいろいろなことを知っている人たち。これをどう行動に移していくかがこれから大切だと思った」

敬老創業者の1人で2008年に亡くなったエドウィン・ヒロト氏の弟であり、現在は引退者ホームの住居者であるウィリアム・ヒロト(86)さん(奥さんのマーガレットさんは以前の理事だった)は「初めての集会としては悪くなかったし、こんなにたくさんの人が集まるとは思っていなかったから驚いた。2世、3世、新1世といった幅広い人たちが参加していた。こういった集会は日本語と英語でしないとならないのでとても難しい部分もあるからよくやっていたと思う。本当はもっと早くに開くべきだった。だけど、開かないよりはずっといい。これから何が起るかみてみよう。売却ではなく他のさまざまな選択肢を模索できるようにするためにも、すくなくともエスクロー完了を延期することができればと望んでいる」

およそ150人が集まった初のコミュニティー集会

およそ150人が集まった初のコミュニティー集会

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