老いの矜持

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 子供の頃、テレビで見ていた司会者や歌手が次々とこの世を去っていく。「鋼の肉体」を誇った大横綱も足早に逝ってしまった。
 かつて老いた父が「知り合いは(賽の河原の)向こう岸のほうが多くなった」とぽつりと言っていたのを思い出す。
 日本では、〈人生の最後をいかに生きるか〉を諭す本が大流行のようだ。「就活」(就職活動)ならぬ「終活」(人生の終わりに向けた活動)という造語まで生まれている。
 その「終活」本にも楽観的なものから人生訓のようなものまでいろいろある。
 「島耕作」の人気漫画家が著した『弘兼憲史流「新老人」のススメ』(徳間書店)——。
 「縁側でお茶をすすっていた昔の老人像はもう古い。新しい価値観や考え方を持つ、かっこいい『新老人』になろうではないか」
 2800人を看取ったホスピス医の小澤竹俊さんの『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』(アスコム)——。
 「老いて、病いを得ると人生が成熟していく」「死の前では財産も地位も無意味。他人と比較するよりも大事なものがある」
 それぞれに含蓄のある助言が散りばめられている。
 そんな中で私の好きなのは、中野考次さんの『老いの矜持』(青春新書)だ。
 「老いは成熟であり、老いには老いの充実した人生がある」「せめて死ぬまでの時間くらい自分の思いのままに生きねば、自分に対して申し訳ないではないか」
 さて、自分はどんな「終活」をすべきか。
 「老後の一日、千金にあたるべし」(貝原益軒「養生訓」)
 日一日一日を大事にせねばと思う。【高濱 賛】

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