日経小説大賞の授賞式

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 初めて小説大賞の授賞式を見ました。2月に行われた第8回日経小説大賞の授賞式・座談会です。大手町の日本経済新聞社のホールは600人収容の会場です。今までも日経のセミナーをここで聞いたことはありましたが、小説大賞の授賞式は初めてです。
 座席は満席で、受賞者は60歳で定年退職して小説を書き始め63歳で大賞受賞の太田敏明氏。この大賞の受賞者では最高齢の63歳(今までは54歳)だそうです。大学時代は東大野球部と変わった経歴で、会場には同期の野球部仲間がたくさん来ていて、作者が江川投手との初対決にベンチのサインを見落としたなど挿話が紹介され会場の笑いを誘いました。
 引き続いての座談会は選考委員の辻原登氏、高樹のぶ子氏、伊集院静氏で、皆さんたくさんの賞を受賞し、直木賞はじめ他の著名小説賞選考委員もされている人たちです。座談会では本賞の選考過程や小説の評価、これからの励ましなどが軽妙な司会で非常に面白く語られ、なるほど小説の評価や選考はこのように行われるのか感心しました。
 選んだ以上は立派な小説家になってほしいと思うのは選考委員に共通した思いのようです。今回の小説はダム建設をめぐる推進派と中止派のせめぎ合いが背景になっているが、社会問題だけを取り上げる社会派小説家だけでなく、せっかく野球部出身なのだから野球も取り上げてほしいし幅広い分野を舞台として活躍してほしい。63歳で受賞では遅すぎるきらいがある。アマチュアは書き始めて少し行き詰まると投げ出して別のテーマに移るが、プロは書き出せばなんとか最後まで書き上げるとか、さまざまなアドバイスがなされました。
 聴衆の大部分はお年寄りで、落選したが次の挑戦のために授賞式を見ておきたいという人も多いようです。インターネットの発達で何もかもデジタル化する今日、それでも人々の本に対する執着や、何かを書き残したいという望みは強いようです。プロの作家はどのように考え評価するのか、買った本の内容もなかなか面白かったが、授賞式そのものが新鮮でした。この体験は、これからの自分の読書にも大いに刺激となりそうです。【若尾龍彦】

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