新刊「六市と安子の“小児園”」:日米中で孤児を救った父と娘

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現代書館発行  大倉 直著

発刊された六市と安子の“小児園”

 日本人移民が多かった戦前、ロサンゼルスに「小児園」という日本人困窮家庭の児童救済のための養護施設があった。1914年(大正3年)に創立され、日本総領事夫人を名誉会長に日系社会の有力者が理事として名を連ね、知らぬ人のない日系社会が誇る立派な福祉施設だった。施設の売却で話題となった旧「敬老ホーム」のような存在だったが、今は誰も知る人はいない。

 この小児園の創立者は、大分県出身の楠本六市。楠本は、両親も分からず、やけどを負った不具の孤児を救い養女とし、安子と名付けた。養父の意を受け長じた安子は単身中国に渡り、日中戦争の最中に、中国人孤児のためにもう一つの小児園を作った。この親子の強く胸を打つ人類愛のドラマチックな実話のノンフィクション小説である。
 中国の小児園は、南加の日系人が資金を出し合い支えたという。この知られなかった戦前の日系移民の歴史の中でも立派な業績を克明に掘り起こし、さらに日本でのリサーチにより、初めて明らかになったこの日米中3国にわたるスケールの大きな歴史的感動物語を知ってもらいたい、と日本で現代書館からこのたび、出版された。
 著者の大倉直は、社会に足跡を残したにもかかわらず、無名である人物に焦点を当てて書くノンフィクション作家。1910年に日本からアルゼンチンにわたり、牧場を経営した陸軍学校出身者を取り上げた「陸軍将校のつくったチーズ」で、小学館ノンフィクション大賞の候補となった実力を持つ。初期の日系移民史にも詳しく「移民の時代」「戦争の時代」をていねいに追うことで、六市と安子らをめぐる人々、日米中の実像をあぶり出して「歴史は細部から浮かび上がる」ことを鮮明に示す傑作ノンフィクションである。ロサンゼルス在住の日本人には必須の書物といえる。
 「六市と安子の『小児園』」は、日本で定価1800円。小東京の合同教会内のブックストアで購入でき、電話213・626・1090。または、トーレンス在住で同書への資料提供者のミコ・ヘンソンさんが日本から持ち帰った数冊を20ドルで譲る。ヘンソンさんの連絡先は、電話310・378・3550。

 南加在住の読者の感想
 とても素晴らしい本です。思いがけないエピソードが次々と展開し、人の世の結び付きの面白さを感じました。世に知られることなく、ロサンゼルスと日本、中国で綴られていた六市と安子、そして2人を取り巻く愛ある人々の物語がこの本で知られることを喜びます。69歳になった安子さんの元園児たちとの上海での再会は、特に感動的でした。この本を基に、日本、米国、中国を結ぶ映画が出来ないものかと思いました。(Tさん)
 今までロサンゼルスでも知られていなかった小児園。また六市さんと安子さんが、国を超えて孤児たちに注がれた無償の愛に感動しました。粘り強く資料を集め、本にされた努力に感謝です。読み終わると、ロサンゼルスの日系人の歴史に興味のある友人に回しました。少しでも多くの人に、知ってもらいたいと思います。(Iさん)
 「六市と安子の小児園」すぐ読みました。次に妻が読み、今長女が読んでいます。どんな困難も、命の危険をも顧みず、愛情と信念で偉業を成し遂げられた多くの方々の実話に心から感動しました。長期間、粘り強く取材を続けられたご尽力に感銘を受けました。(Kさん)
 「六市と安子の小児園」を一気に読みました。何度も涙が溢れ、心が清められたと感じています。この本を読みながらこの2人の人間の生き様を何としても後世に残したいとの一念、日系移民の歴史、日中そして日米間の戦争など—多くのことを学ばせていただきました。(Lさん)
 深い感動を持って読み終えました。文章もとても読みやすく書かれています。ぜひ一人でも多くの日本人、日系人に読んでほしいと思います。(Sさん)

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