トランプの唇寒し秋の風

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 ああ、またやった。
 しっかり支えていたはずの家宝の花瓶が手から滑り落ち、音を立てて真っ二つに割れた、トランプ大統領の失言癖はそんな感じだろうか。
 いや多分、深く考えたり、相手の立場を思いやって言葉を選ぶという努力などしない人なのだろう。朝ごはん用の安物の皿を毎日落として割っている、ようなものらしい。
 夫をアフリカの銃撃戦で失った未亡人に弔意を表し、彼の犠牲に対して深い哀悼と感謝の気持ちを届けることは米国大統領として非常に大切な任務のひとつである。
 電話をかけて未亡人と話す時点で、戦死した士官の名前がうろ覚えだったというから、りっぱなものである。そして彼の口から零れ落ちたことばは、「彼は自分の任務を十分理解して出征したのだから…辛いことには違いないけれど…」
 このような曖昧な言葉は受ける人の立場やその時々の気持ちでいかようにも取れる。兵士が自分の任務を理解して出兵したのだから、(戦死しても仕方が無い)、とは夫を亡くしたばかりの未亡人に対して決して温かい慰めの言葉にはならない。
 このプライベートなはずの電話の一部始終は運悪く電話がスピーカーホンにセットされていたために、その場に居合わせた人たち全てが聴いており、メディアに漏れてアメリカ中が知るところになったわけだが、糾弾されれば彼の十八番で「けしからんメディアのでっちあげ」で押し通す。
 その上この話にはおまけが付いており、大統領は電話をかけるに当り、ホワイト・ハウスの職員を取り締まる、いわゆる番頭さんのケリー氏(元海兵隊のゼネラル)に「一体どのように話せばいいのかね」とアドバイスを求めたというのである。七十余年も人間やっていて、お悔やみの一つもまともに言えないのだろうか。世界のリーダー(?)を自負している米大統領が、何とも情けない。演説でもあるまいし「心」があれば自然に出てくるお悔やみを、口うつしで教えてもらってそれでもドジやっている。
 アメリカはこんな茶番師と後3年以上も付き合わねばならないのだろうか。【川口加代子】

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