悲しみの先住民の日

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 全米のいくつかの地域では、10月の第2月曜日は「コロンブス・デー」ではなく「先住民の日(Indigenous Peoples Day)」と制定されている。ロサンゼルス市議会でも今年8月、コロンブス・デーを先住民の日に変更することが決まったばかりだ。
 1492年10月12日にコロンブスがアメリカ大陸に上陸したのを記念し制定されたコロンブス・デー。イタリア系米国人にとって、イタリア出身のコロンブスを祝す伝統的な祝日であった。
 一方で、コロンブスが上陸した際、多くの先住民が殺害されたことから、先住民を先祖にもつ人々にとっては暗い歴史を蘇らせる日ともなっていた。
 全米の都市で最初に先住民の日が制定されたのはカリフォルニア州バークレー市。1992年のことだった。まもなくして同州サンタクルーズ市が後に続いたが、その後しばらくこの動きは止まった。しかしここ2、3年で再びコロンブス・デーを先住民の日に変更する自治体や大学が増え始めた。今年だけで全米およそ20の都市で先住民の日に変更する議案が決議された。ロサンゼルス市もそのうちのひとつだ。
 時同じくしてその日、ロサンゼルスからおよそ150マイル北西のサンタバーバラ郡ロンポック市にある「ミッション・ラ・プリシマ・コンセプシオン」に筆者はいた。カリフォルニア州には18世紀から19世紀にかけてスペインのカトリック教会が宣教活動のために建てたミッション(伝道所)が南はサンディエゴ、北はサンフランシスコまで21カ所点在する。
 ミッションの建物の中には宣教師たちの生活を再現する置物や家具が置かれ、当時の様子を知ることができる。それと同時に、ミッション周辺にいた先住民「チュマシュ族」の悲しい歴史についても触れられている。
 先住民は改宗させられ、労働力として扱われ、入植者と共にもたらされた天然痘などの伝染病により、抗体を持たない先住民の多くが亡くなったという。慣れ親しんだ土地を追いやられ、自らのアイデンティティーを消し去らざるを得なくなった悲しい歴史に胸が痛む。10月の第2月曜日、先住民の日ともいえるこの日はただの連休ではなく、先住民の悲しい歴史を振り返る日ともなった。【吉田純子】

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