日本への外国人旅行者が近年急速に増えた中で断トツに多いのが中国人で、街中で日中の言葉が分からない同士で筆談を試みる場面もあるらしい。これは運良く通じる場合も少しはあるが一般にはあまりうまくは行かない。互いの文化も語彙も語意も条件がいろいろ違うからだ。
 大陸は戦後共産党政権が簡体字に変えたから日本人はこれをあまり読めず、中国人も日本で使われる漢字は読めないのが多い。台湾人は今も旧来の繁体字だから日本の漢字はやさしく簡単に読むし、香港も返還後も繁体字を続けているから台湾人と同様に割と読める。
 だが全般に筆談を困難にする要素が多い。まず中国側の漢字で日本に無い字が膨大だ。そもそもyouを意味する你(ニー)すら日本に無い。さらに同じ熟語でも互いの国で意味が違う例が多数ある。例えば手紙は日本では便り、文のことだが中国では鼻紙、ちり紙のこと。帰国する中国人に「帰ったらたくさん手紙送ってね」と書いても「えっ?」となる。湯は日本では温かい水や風呂の湯だが中国ではスープ。湯に入ろうと言えば中国人には? 老師は日本では高齢の恩師とか老いた僧、中国では先生のことで若い女性でも先生は老師。東洋は日本ではアジアから中近東辺までのオリエント地域だが中国で東洋とは日本。中国から東は日本だから。愛人は日本では恋人で、どちらかというと正規配偶者以外の特殊な恋人を指すが、中国や台湾では愛する夫をいう。私の愛人ですと夫を紹介されたら日本人は「えっ?」となる。日本でいう恋人は中国では情人。飯店は日本人はレストランと思うが中国ではそれも使うが本来はホテルで、レストランの意味では料理店がある。
 そもそも中国とは日本人は向こうの国名と思っているが、古来中国が国名であったことは無く今も定めた国名ではない。国名の中華人民共和国の中と国を取ってつなげたと思っている日本人が多いが、中国の意味は太古から世界の中央の国を意味する通称、自己尊称であり言い換えればオレ様のような語で日本が神国日本などと名乗るとしたらそれに当たる。中国の国名は古代より秦、唐、清などあるが中国であったことはない。【半田俊夫】

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