熱くさせたのは・・・

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熱くさせたのは・・・
 1カ月前までは「おじさんの集団」と揶揄されていた。しかし今や日本中が彼らを讃えている。ワールドカップを戦った日本代表、サムライジャパン。残念ながらベルギーに敗れてベスト8進出はならなかったが、彼らの闘志に日本中が勇気をもらった。テレビも新聞も連日この話題で持ち切りだ。
 日本は梅雨の季節、西日本を中心に大雨による被害も出ている。気持ちまで湿りがちになってしまうこの時期に明るい話題を提供してくれた。
 なーんてことを書いてみたが、私自身はそんなに熱くはならなかった。同僚は毎回試合を見て寝不足だという。確かにいつもよりあくびが多く、顔もむくんでいる気がする。でもとても充実しているようだった。そんな情熱を持てるなんて正直うらやましい、そう思った。
 そんな日本代表の勇姿も、けさ突然入ってきたニュースでかすんだ。7人の死刑が執行されたのだ。彼らはオウム真理教の元教祖、松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚、そして教団の元幹部たち。朝の身支度の手を止めて思わずテレビに見入ってしまった。心がざわついた。1つの時代が終わった、そんな気がした。
 平成6年の松本サリン事件、平成7年の地下鉄サリン事件など一連のオウム真理教が関係する事件では、合わせて29人が死亡、約6500人が被害にあった。20年以上経ったいまも後遺症に苦しむ人もいる。裁判では13人の死刑が確定。3月には教団の中で高い位置にいた7人を東京拘置所から全国5カ所の拘置所に移送し、死刑執行の時期が焦点になっていた。
 かつて山梨県でテレビ局に勤めていた時、「サティアン」と呼ばれていた教団施設の跡地の取材に何度か行ったことがある。目の前には雄大な富士山。そこに小さくたたずむ「鎮魂」と書かれた石碑。本当にここが日本を震撼させる事件の舞台だったのかと思うくらい静かなところだった。でもそれを取材していた頃の私は、この状況を伝えたいという思いにあふれていた。
 当時を思い出して私を「熱く」させたのは、サッカーではなく死刑執行のニュースだったというのは、なんと皮肉なことだろうか。【中西奈緒】

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