苦しみからの色眼鏡

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 夏休み初日、慣れない土地で1時間半もの行列の中にいた。なかなか前に進まずに足も疲れてイライラ。その矛先は次第にある特定の人たちに向かっていった。
 ヨガの先生に教わった言葉を思い出したー「浮かんできた感情をただただ遠くから眺める。良い悪いなどの判断も下さずに。あぁ自分は今そんなふうに思っているだ、くらいに」。でも、それはなかなか難しい。
 USCの学生時代にも似たような経験をした。この人たちとはもう絶対にグループワークをしたくない。あまりに怠惰で自分の負担が増大。それはサウジアラビアからの留学生だった。
 特定の国の人を嫌に思うなんて初めての経験だった。ついに人種差別をするような人間になってしまったのか、と自己嫌悪に陥った。
 フィンランドの首都、ヘルシンキのヴァンター国際空港。入国審査を待つ長蛇の列には顕著な傾向があった。白人の入国管理官たちがあからさまに長い時間を割いていたのは、肌の色が茶色かあるいは黒人の人たち。一方で中国人の団体客や日本人はスムーズに通過していった。
 確かな理由はわからないが、審査の時間の差はあまりにも露骨だった。これだけ各国でイスラム系の人たちによるテロが起きていて、去年8月にはヘルシンキでもモロッコ人青年による無差別殺傷テロがあった。一度フィンランドに入国したら陸路で簡単に移動できることもあり、審査が慎重になるのはやむを得ないとも思えた。しかし、だからと言って全員がテロリストでも、その予備軍でもない。ただ肌の色が濃いから、イスラム教徒だからというだけでレッテルを貼られてはたまったものじゃないだろう。
 しかし、いざ辛い状況に置かれて、他人のせいにしたくなってしまった自分がいた。入国管理官の仕事の遅さが原因だった可能性だって考えられる。それなのに、審査に時間がかかっている人たちにイライラ。彼らだって被害者かもしれないのに。なんて酷い感情を抱いてしまったんだろうか。
 浮かんできたこの感情ときちんと向き合うべく、ヨガとメディテーションにいそしみたい…今、そんな気持ちになっている。【中西奈緒】

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