東京6大学初の女性総長:法政大学の田中優子氏が来米

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USCで江戸時代の織物文化について講演した田中総長


USCで江戸文化の講演
同窓会開きLAの卒業生と交流

 江戸文化研究者で、東京6大学初の女性総長となった法政大学の田中優子氏が来米し、9月28日に南カリフォルニア大学(USC)で江戸時代の織物文化について講演した。29日には当地の同校卒業生からなる校友会支部メンバーおよそ50人を招き同窓会「法政ミーティング」を開催。当地の卒業生らと交流した。同大学の海外への発信力強化を目指す田中総長に、着物や江戸文化の魅力、そしてこれからのグローバル教育について話を聞いた。【吉田純子、写真も】


江戸文化研究者で、東京6大学初の女性総長となった法政大学の田中優子氏

 もともとは江戸時代の文学を学んでいたという田中総長。言葉に関心があり、特に中国文学の影響を受け入れながら独自に変化した江戸時代の文学を研究していたという。そんな中、着物と出会う。
 江戸時代の庶民の文学の中には漫画本や浮世絵のように絵をつけた本が数多くあった。そこには、言葉だけでなくビジュアルの文化が急速に発達し、文学の中にも着物について詳しく説明されていた。「(文学の中で)言葉でもビジュアル面でも、(江戸時代には)そこに毎日着ている着物がでてくる。文学をやっているにもかかわらず、着物や生活文化について知らないと文学はできないと思ったのです」。こうして着物への研究を進めていった。
 ベトナム文学や韓国文学など、アジアの文学にも関心があった田中総長だが、こうした国々の文学が日本と同じように中国文学をもとにしていることに気付く。そして文学と同じように、布文化もアジアで共有していることを知る。
 研究のため1993年〜94年の1年間、アジアの資料も豊富なオックスフォード大学に1年間留学。イギリスで研究中、さらなる布文化の深みにはまる。「布、特に木綿産業が発達したことで産業革命が起こったが、イギリスと日本で起こったことがアジアを土台にして起こっており、アジアの布産業がなかったらイギリスも日本も布産業がなかったことに気付いたのです」。こうしてイギリス時代に「テキスタイルの比較研究」という論文を書き、研究を深めていった。
 その後、インドネシアやインドやタイ、ラオスなど東南アジア諸国を訪問。こうした国々では布の文化が独自に育っているにもかかわらず何か共通性があった。「例えばベトナムのアオザイの衿は満州民族と同じ立衿。ブータンでは男性の衣装は中国の漢民族、女性はインド系のスタイルだった。中国の文化をどのように独自に別のものにしていったか興味を持ち始めたのです」
 各国の布文化をひも解いていくと、大文明の影響を受けながら独自にアレンジし、各国で表現方法が違うことがわかってきた。「布や衣類は目でみて分かるから面白い。だから今も研究を続けているのです」

着物姿がトレードマーク

 テレビなどのコメンテーターとしてメディアでも活躍。着物姿で登場することが多い田中総長だが、着物を着始めた理由は以外にもひょんなことがきっかけだった。
 80年代から講演依頼がくるようになったが当時30代のはじめ。研究者として本を買うばかりで洋服を買うことがなかったという。「スーツがあまり好きではなかったので、母の着物に帯を着け講演に行くととても歓迎されたのです。さらに私は草履は大丈夫だけどハイヒールが履けない。金属アレルギーもあるため、アクセサリーが必要になる洋服より着物のほうが都合が良かったのです」。今では着物姿が田中総長のトレードマークとなっている。

 江戸文化の魅力、海外の人も知って

 江戸文化研究の第一人者として知られる田中総長だが、海外の人にも江戸文化の魅力を知ってほしいと話す。
 現代と違い、物の世界をとても大事にしていたのが江戸時代。消費するだけでなく、ひとつの物を手に入れたら、あれこれと形を変えて自分独自の物にしていくサステイナビリティー(再生可能)の精神が根付いていた。「物には消費物としてだけではなく、記憶として残ったり、自分が作り上げてきた創造物であったり、そうした価値観が物の世界を豊かにしていた。『豊かさ』とは『量』ではない。今忘れ去られがちな『本当の豊かさ』を知ってほしいのです」

「これから女性が活躍できる」

 「近年、海外に興味がある意欲ある女子学生が多い」と話す田中総長。「英語コースが増える一方、日本では英語で教えられる教員が足りていない。英語で教えられる教員を増やしていかなければならない」と話す。
 同時に、日本に来た外国人留学生には日本語をきちんと教える必要性があると説く。「数ある国の中から日本を選んでくれたのです。帰る時には日本語を話せるように、そして欧米とは違う考え方や価値観があることを知り、日本文化について正しい認識を身に付けて帰ってほしい」。その教育方法がまだ日本では確立されていないと指摘する。
 昨今、日本の学生の内向き思考が取り上げられることが多いが、田中総長は「女性は内向き志向になっていない。法政大学では海外にいく留学生は女性を中心に増えている。『これから女性が活躍できる』という期待をもっている。社会はそれを裏切らないでほしい」と力を込めた。

グローバルネットワークを強化

 法政大は2014年に文科省から「スーパーグローバルけん引型校」の指定を受け、国際競争力の強化に努めている。


ロサンゼルス法友会の嶋貫昭一会長(左)と田中総長

 世界各地で活躍する卒業生と留学生のグローバルネットワークの構築を目的に、校友会支部がある世界各国の主要都市に田中総長自ら訪問し同窓会を開催している。同大学の校友会は海外に10支部を構える。
 田中総長とともに今回来米した法政大学校友会の桑野秀光・特別名誉顧問によると、これまでにドイツ、パリ、ロンドン、ニューヨーク、北京といった都市を訪問。世界各国で活躍する卒業生と交流してきたという。
 ロサンゼルスでの同窓会は今回が初めて。ロサンゼルス法友会(嶋貫昭一会長)は1978年、卒業生4人が発起人となり設立。昨年12月には、本学から支部として承認された。現在は約40人が在籍し新年会やバーベキュー、ゴルフ大会、忘年会などを通し、親睦を深めている。


「法政ミーティング」に参加した田中総長(前列右から4人目)、同大学校友会の桑野特別名誉顧問(前列右から3人目)や卒業生、大学関係者ら

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