「死」とは何か

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 イェール大学で人気講義をまとめた本が10月上旬、邦訳されて日本でも発売されている。中高年層ではブームになっているらしい。
 世界各国で翻訳出版され、韓国、中国では売れに売れて、世界規模では累計25万部を超えるベストセラーになっている。
 本のタイトルは『「死」とは何か』(文響社、原題『Death』)。表紙はおどろおどろしい骸骨だ。
 著者はイェール大学のシェリー・ケーガン教授(64)。道徳哲学・規範倫理学の専門家として知られている。
 評判の講義は哲学概論で学部高学年を対象に23年間続けられている。学外で人気となったのは2007年春からイェール大学の公開オンラインコースとして放映されたからだ。
 本書の魅力は、人種、民族を超えて誰もが関心がある「死」について、著者は既成の宗教的見地から論ずるのではなく、哲学的、倫理的見地から追求する点にありそうだ。
 オンラインで見る教授は、カジュアルでノーネクタイ、背広は一切着ない。大学の講義は教壇の上にあぐらをかいて座る独特のスタイル。これがまた学生に受けており、「東洋哲学を説くインドの僧を思わせる」(イェール大学の男子学生)らしい。教授の問いかけはこうだ。
 ①魂とはなにか②肉体が死んだ後われわれは存在するのか③死は怖いことなのか④永遠の生命とは望ましいことなのか⑤自殺は正当化できるか⑥これらの質問は今生きていることにどう役立つのか。
 教授は単純明快にこう述べている。
 「人間は魂と肉体とで存在する。早死にするか、100歳まで生きるかといったことは本質的には問題ではない。『非存在』の時空というのはなにも死後だけではない、生まれる前も同じ状態だった」
 「死は悪くはない。(病などで)死ぬに至る過程が耐え難いだけのことだ。自殺は正当化できる。死にたければ死ねばいいだけのこと。ただ自殺を思いとどまり、死ぬ前までに夕日を眺めたり、音楽を聴いたりするのも悪いことじゃないかもしれない」
 宗教離れが目立っている。そうした中で教授の取り上げた「死」という深層なテーマに皆飛びついた。イェール大教授というカリスマ性も大いに役立っているはずだ。【高濱 賛】

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