学問のすすめ

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 一万円札の肖像で知られている福澤諭吉の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」で始まる「学問のすすめ」は、ほとんどの人が知っていると思われる。慶應義塾の創始者であることを知らない、もちろん読んだことがない学生がほとんどと知って、自分もまた然りまだ、で読んでみようと思った。
 なぜ学問が必要か、学問の目的を説き、単にいい大学に入るためではない学問について、多方面からわかりやすく例を用いて平易な言葉で説明している。郷里に新たに学校を開くにあたり、友人たちに書いたものが広く世間に公表した方がいいというすすめから、慶應義塾の同志に見せることになった。
 145年以上も前の明治初期の日本が近代国家になったばかりのときに書かれたものではあるが、現代にあっても通じるところが多々ある。17の各編には学問の目的、愛国心のあり方などのテーマがあって、個と国家の関係では、政府と人民は対等である。人と人との関係は、本来同等、権理(利ではなく)が等しい。貧富強弱は現実のものであっても、力の差を利用して他人の権理を侵害することはできない。国法は大事であって、法律が理不尽だからといって破っていいということはない。間違いは正すように進言し、それが聞き入れなくても繰り返し進言し、改める努力を怠らない。そのために学問が必要で、それは単に文字・書物を読むことにとどまらず、実生活も学問、実際の経済も学問、現実の世の中の流れを察知するのも学問であり、人の話を聞いたり工夫したりが必要と説く。
 大いに学問をして、小さな生活の安定に満足するな、と高いレベルの学問の重要性と期待を説き、物事の様子を比較して、上を目指して自己満足をしない。判断力を高めるのは学問である。情報があふれている現代にあっては、取捨選択の判断力がより必要になる。最終編の人望については、多方面で人と接することで関心をさまざまに持ち、偏らず交際を広げることをすすめている。
 今年も残り2週間。急逝する人が相次いでいる。明日はわが身を思い、閻魔様に笑われないように学問をしていかないと! と思う年末である。【大石克子】

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