安全のジレンマ

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 誰もが安全に暮らすことを願っている。侵入者や移動物体によって、平和で安全な生活を脅かされることを望まない。そのためにセキュリティーシステムを導入したり、ゲートやドアのカギを強固なものに替えたり対策を講じる。外部からの侵入に対して、ガードを固めれば固めるほど、自分に何かあった時に助けを求められなかったり、救助を要請することができたとして、救急隊員が入るときドアや窓を壊すことになる。
 在宅の高齢者に食事を届けるボランティアをして長いが、今ほど届けることにストレスを感じたことはない。届けられないことが増えているからだ。
 ゲートがロックされていて入られないところが増えている。管理人がいて開けてもらえるところはいい。大家さんの信用でカギを預かったり、アパートで本人が外で待っていられるとか、電話が通じて開けてもらえるならいい。外で待てない、動けない人たちが必要としている食事を、鍵が掛けられているために届けられない。
 本人の安否確認も役目なのにそれもできない。自分は一人で大丈夫と思っていても、いつ弱って分からなくなるか、倒れるかは分からないもの。部屋の鍵がかかっていても、声で確認できることもあるが、そこまでたどり着けないと、どうしようもない。電話連絡しようにも持っていない人もいるから難しい。
 倒れて救急車で運ばれても、他人には搬送先や状況は知らされない。心配が募るだけだ。自動ロックのゲートになったアパートに住む高齢者は、不便この上ないと不満をもらした。うっかり鍵を持たないで外に出て、入られなくなって大変だった。雨の中、寒さに震えながら外に立って他の住人が戻ってくるのを待ったと。
 心配で会いに行きたい、用事がある、でもゲートやドアを開ける手段が、どうやって中に入れるか、誰に聞いたら、頼んだらと、考えただけで疲れる昨今のセキュリティー事情。防御も過ぎれば、体が不自由になった時より必要になる、人とのつながりをなくしかねない。
 高齢者サポートと侵入者対策と、どちらも安全確保は欠かせない。方法が真逆になることもあって、どちらを優先とはいかない。【大石克子】

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