爽やかな出会い

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 昨年のことだが、職場のホリデー・イベントでインターネットを通してボランティアを探した時、偶然その催しの日に自由な時間があるという理由で応募してくれた人がいた。
 スウェーデン在住で、たまたまシカゴに短期滞在中の日本人女性のMさん。職業は料理や栄養学のバックグラウンドを持つプライベート・シェフ。
 それを聞いて「まさかそんなプロに、ハンバーガー用のトマトや玉ねぎをスライスしてくれとはいくらボランティアでも頼みにくい」と遠慮したが、ご当人は「心配しないで。何でもやりますよ」と気軽に引き受けてくれて、自前のエプロンと包丁持参で現れ、さすがシェフ、手際よく準備を手伝ってくれて、大助かりだった。
 その上、手早く出来ておいしい料理のノウハウを伝授してもらったのだが、「なるほど」と感心して聞いてはいたものの話が一区切りついたところで…さて、頭に残っていたのはバラバラの情報だけ。
 もっと話が聞きたくて、「日を改めて一緒にお食事でも」と誘ったら、
 「いいですね、今時間がありますから、皆さん集まるのなら、私が料理してもいいですよ」と瓢箪(ひょうたん)から駒の申し出に遠慮なく乗っかってこれが実現。その場に居合わせた7人は食材の実費を負担しただけで、メインのチリアン・バスとスペアリブのほか10種に及ぶサラダや副菜、プロのシェフによるディナー・パーティーにありついた。
 このMさんをそのままスウェーデンに帰すのが惜しくて、さらに料理セミナーの講師をおねがいしたらこれもすんなり受けてもらえて、当日は「簡単で手早く出来てバランスの取れた料理」のテーマで、サンプル料理が8品、いずれも栄養を考慮したメニューで、食材の持ち味をバランスよく生かす工夫が随所にみられ、参加者に大いに喜んでもらえた。
 Mさんとの出会いで気が付いたことは、「仕事に自信のある人は、決して知識の出し惜しみをしない」ということだった。
 Mさんはシカゴが体感気温マイナス四十数度の朝、爽やかな印象を残して夜の長いストックホルムに帰って行った。【川口加代子】

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