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記事の「男」と「男性」

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 ここ数年来、日本の新聞やテレビの事件報道で用語法や姿勢の変化に気付く。特別に凶悪とか社会的影響の甚大な惨事でない限りは、その事件や犯罪を犯した人間の名前を出さなくなっている。IDとしては会社員、教師、学生、無職などを書くが個人名と所属の組織名は伏せる。所在地は書くが具体的に何処の誰かを特定させない。生徒に暴力を振るってけがをさせ免職になった教師とか、会社の金を横領して逮捕されたとか、万引きで掴まり警察に引き渡されたとかのケースでは当該の所在地を書く程度で、使い込み犯は会社員36歳程度の表現にとどめている。起訴され裁判で有罪になるまではまだ被疑者に過ぎないと人権重視基本の報道基準が強化されているのだろう。
 詐欺事件でも何億や何千万と大きな規模や多数の市民が被害者になっている深刻な事件では捜査や逮捕段階で被疑者の姓名、年齢、職業、居住地などを出しているので、一定の線引き基準があると思われるが、事の性格や程度での運営は微妙だろう。犯人や被疑者の名前を伏せる場合も出すケースもどちらも現代社会で絶対基準は難しそうだ。小さな事件でも名前が伏せられるとけしからん奴だ、一体誰だと知りたいのが読者心理だが。
 さて本題の記事での「男」と「男性」の使い分け(女と女性も同様)。名前を出さない程度の事件報道で例えば男Aが男Bに暴行を加え逮捕された場合、始めは住所不定無職24歳が高校教師40歳にけがをさせたという具合に始まるが、その後の引用では前者の悪い犯人側は「男」、後者の被害者は「男性」となる。
 男も男性も共に本来善し悪しの含みのない単に性別を表わす名詞に過ぎないが、記事では男は悪玉の代名詞、一方男性は善玉か無実、無色の扱いになる。日本語で本来共に単なる性別表示語でも「男」はいい男、立派な男、男の中の男、大した男だ、男らしい、など良い用例が多い。男一匹など男だけで良さを醸し出す用法すらある。本来無色の語ゆえにダメ男やその男凶暴につき、など悪い用法もあるにはあるが。記事に載りたくないが、載る時は記事では男にはなりたくないものだ。【半田俊夫】

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