リビング・レジェンド

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 人の命には限りがあるが人間が生み出した素晴らしい創造物には永遠の命が与えられることがある。ローマの遺跡にしろ、紫式部の源氏物語にしろ、元々はその時代に生きた人間の手で作り出されたものだ。では、われわれの現代からは何が未来に残されていくのだろうか。
 1週間ほど前にポール・マッカートニーの公演を見た。 2018年に開始したツアーが最終日に近づいている。衰えぬ人気にたがわず素晴らしいコンサートだった。
 少なくとも私は、これまでに「ビートルズは嫌い」と言う人に出会ったことがない。反対に、ビートルズを神と崇める友人が数人いる。彼らがビートルズを聞き始めたときにはバンドはすでに無かったという点を興味深いと思う。
 ビートルズの活動は1962年のデビューから解散の1970年までのわずか8年で、その間に12枚のアルバムと213曲を発表した。解散はほぼ半世紀前のことにもかかわらず、現在でも聞き継がれている。封切り中の映画「YESTERDAY」(日本では秋に公開予定)は、「もし誰もザ・ビートルズを知らない世界があったとしたら」という設定のファンタジーだ。ビートルズの存在しない世界はキングコングのいる世界と同じぐらいあり得ないということなのである。
 ポール・マッカートニーの功績は、卓越したソングライティングの才能で、ポピュラー音楽史上最も成功した作曲家とギネス認定されているそうだ。ビートルズ解散後も昨年発売の新作まで22枚のスタジオアルバムを制作している。
 77歳のマッカートニーの公演は2時間40分の長さで曲数は30曲に及んだ。どこからそのエネルギーがあふれ出すのか。ステージは神々しくさえあった。最後は会場がひとつになり「ヘイジュード」を唄った。名曲は聞き継がれ、弾き継がれ、唄い継がれ、作者が居なくなった未来の世界にも存在し続けるだろう。未来の伝説の人物と時間を共にしたという感動が今でも続いている。
 7月13日のドジャース球場で今期のツアーは終了するという。いつまでも健康で、創り続けてほしいと心より願う。【長井智子】

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