従兄

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 日本に住む47歳の従姉が昨年、性転換手術を受けて「従兄」になった。私とは同学年だが、早生まれの私が誕生した時、ほぼ一年の年齢差がある従姉はすでに歩いていて、成長ぶりや学校の成績など、子供の頃には何かと比較されたものだ。その頃からすでに、従姉の心は男の子だった。
 体と心の性が一致せずに辛い青春時代を過ごしてきたことを周りに打ち明けてくれたのは、ほんの数年前のことだ。公務員と保母をしていた従姉の両親は厳しく、本人の意に反して従姉を女子高校へ入学させたが、毎日スカートをはいて通学することが苦痛で中退。そんな従姉に母親は、「あなたを産んだのは間違いだった」とまで言った。その後、従姉は家出や自殺未遂を繰り返した。
 LGBT(性的少数者)への理解が日本に比べて深いアメリカでの生活が長い私に、従姉は、親戚の誰よりも先に性転換手術のことを打ち明けてくれた。手術跡が残るその胸は痛々しかったが、ここにたどり着けてとても幸せだと笑顔で話してくれた。手術やホルモン治療の副作用を考えると、十分男っぽい今のままでも良いのでは? と心配する親戚もいたが、従姉は「自分の体が死にたくなるほど嫌だった」と決断の理由を即答した。
 7月21日に行われた参院選では、行政や企業に性的指向を理由とする差別を禁じるLGBT差別解消法案制定や同性婚合法化を訴えるLGBT支援が主要政党の公約に盛り込まれた。2014年に、五輪憲章に性的指向を理由とする差別禁止が盛り込まれたことを受け、東京五輪を控える日本の政界でも関心が高まっているという。東京都渋谷区は、同性カップルの賃貸契約や病院の面会を拒否した事業者を公表する条項を条例に盛り込むなど、LGBTの権利を擁護する日本の自治体は増えている。選挙前の一時的なアピールに終わることなく、政治の力で少数派の人権を守ってほしい。
 従兄になった従姉は、親戚に言った。「外見は多少変わるけど、中身は全く変わらないから、これまでのように愛して下さい」。生きていてくれて、本当にありがとう。【平野真紀】

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