135社、来場者2700人が商談に熱:MTC、経営と環境の「無駄ゼロ」提案

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日本食とレストランエキスポ

専門セミナーで麹を利用した発酵について説明する八海醸造の馬場紹子さん

 日本食卸売の「Mutual Trading Co.(MTC・本社ロサンゼルス、大畑正敏社長、山本耕生会長)」は業界関係者を対象にした第31回「日本食とレストランエキスポ」を9月28日、パサデナのコンベンションセンターで開催した。日本国外で最古にして最大の規模を誇る日本食の見本市に国内外から参加した135社が、2677人の来場者を相手に自社の商品の売り込みや商談に熱を入れた。

超低温冷凍保存の刺身の試食を待つ参加者

 今年のエキスポのテーマは「Zero Waste(無駄ゼロ)」。レストランの経営面と、食材や食器などで地球資源保護の環境面に配慮し両立を提案。配布したエコバッグの中にはサステナビリティーを前面に押し出したおちょこ(地酒や焼酎の試飲用)、布製ナプキン、金属製の箸、フォーク、スプーンを入れ使用を促すとともにコスト削減につながる食材の廃棄による無駄をなくすことを訴えた。
 大衆食から高級食まで多様化の流れが続く日本食について山本会長は、世界の食として日本食は大きく広がってきており、今年6月にカリフォルニア州で9年ぶりに発表されたミシュランガイドで星を獲得した90店中、ロサンゼルスが25店選ばれ、そのうち日本食はほぼ半数の12店に上ることを強調。「今、ミシェランで星を一番とっているのは、フレンチでもイタリアンでもなく、日本食レストランで、その背景にあるのは、日本食の味、クオリティーの高さが日本食文化への関心とともに広く認識されたことにある」と胸を張る。このエキスポに関しては「明日の日本食の発展への鍵となるものを見つけてもらえればと願っている」と語った。
 エキスポでは幅広い客層を持つレストランオーナーをはじめとする参加者が、年に1度の限られた時間の中でビジネスチャンスを逃すまいと、各ブースを回り三つのテーマの専門セミナーに聴き入るなど、全米で出店数が増え続けている日本食の人気の根強さを伺わせた。

参加者に八海醸造の新商品「あまさけ」を振る舞う馬場紹子さん(左)

 人気の地酒ブランド「八海山」を展開する八海醸造(新潟)は、このたび新商品「あまさけ」を発表し、同社の発酵マイスターで国際酒ソムリエとして活躍する馬場紹子・海外営業部主任が、麹を利用した発酵についてセミナーを行った。世界の発酵食品がバクテリア1種類のみを使うのに対し、日本の発酵食品は「バクテリアも使えば、カビも酵母もすべての菌を菌を使って独自の発展を遂げてきた」と説明。麹菌の発酵過程で、甘さの元であるグルコースや、若い女性、妊婦、授乳時に必要なヨウサンなど人間の体に必要なさまざまなものを生成するといい「だから毎日飲むと腸内の環境がどんどんよくなって排泄力がつき、血行、血色もよくなったりし体全体にいい」。特にグルコースは

八海醸造のブースで新製品の「あまさけ」のプロモーションに努める馬場紹子さん

脳にとって唯一のエネルギー源であるとし「脳の働きがよくなり、寝起きに頭が冴えない人に適している。カフェインなどの刺激はなく、コーヒーよりも甘酒はずっといい」と力説した。シェフに向けては、甘酒の甘さを利用した料理やデザート、カクテル、ドリンクなどの商品開発を促し「クリエイティブなアイデアでキッチンで使ってほしい。白砂糖を甘酒に換えるだけで、白砂糖が持たない良い成分を1度に出す。シュガーの代替材料には最高」と勧めた。
 今回が初お披露目という「あまさけ」は、同社の数ある商品の中でブースではこれ一本に絞った。豆乳、アーモンドミルク、抹茶、プレーンヨーグルト、ブルーベリー、レモンとソーダ水、トマトジュース割りなどを振る舞った。「スムージーや冷凍すればシャーベットになり、フレッシュフルーツと一緒に」とも。甘酒と聞けば、アルコールが入っていると思われがちだが馬場さんは「それは根気良く伝えていくしかない。麹米と水だけで、この甘さが出る日本の伝統飲料として紹介したい」。市販品の410グラムと825グラムの両ボトルをそろえ、業務用サイズは今後の市場の様子を見る。スターバックスなどのコーヒー店にも狙いを向けるといい「甘いカフェオレとしてやミルクを避けたい人など、動物性が全くなくグルテンフリーでビーガン。抹茶やボバなど人気商品とともに使ってもらえればうれしい。安全でおいしくて健康的なのが一番の売り」と声を弾ませた。

福田伸雄さんが考案した米国産ビーフを和牛の端材の脂で調理したハンバーガー

 セミナーで講師を務めたアリゾナ・フェニックスのレストラン「Nobuo at Teeter House」のオーナーシェフ福田伸雄さんは、店で提供している宮崎牛を用い、テーマに沿ってこれまで廃棄していた脂身のフル活用法を伝えた。リブロインの部位は50%の肉しか使えないほど脂が多いが、脂身を薄く切って調理後に残った脂を再利用する料理を考案。「芽キャベツの外側だけをこの脂を使って焼けば、味は甘い脂の和牛そのもの」。短く切った脂身の肉とタマネギをソテーし、醤油と酒で味をつけた後、大根とうずらのゆでたまごを炊き、煮浸しにすれば「丸々大根が和牛の味になる。残ったタマネギと汁、肉の端はサンドイッチ、牛丼にしてもいい」と、おいしく食べるさまざまな例を示した。経営者の立場からは「和牛は値段が高くて、その端材にもお金を払っているので、何も棄てないで有効に使ってほしい」と呼びかけた。
 おむすび店「mama musubi」をパサデナで営むキャロル、フィリップ・クワンさん姉弟は「バラエティーのメニューをお客さんに提供したい。いい商品を見つけ、新しい何かを習うために毎年参加

超低温冷凍保存の刺身を試食するキャロル、フィリップ・クワンさん姉弟

している」と話す。7年前に開業し、おむすびを選んだ理由は「日本で人気で、ここには一軒もなかったのでチャンスと思った」といい、店鋪に加え5カ所のファーマーズマーケットで出店している。ふりかけをかけたり、海苔で巻き、売れ筋の具は鮭を筆頭にスパイシーツナなど15種類をそろえ、胚芽米やビーガンなど健康メニューも用意。MTCとは創業時からの付き合いで、仕入れているブランド米「祭」は「とても粘りがあり、おいしいとお客さんから喜ばれている」という。生魚はケータリングのみ扱っているが、この日はメニュー開発に生かそうと超低温冷凍保存の刺身を熱心に食べ比べていた。
 清酒の菊正宗・海外事業部、同課の良津智成課長は、この6月に米市場に投入したばかりの自信の新ブランド「百黙」を手に「ニューヨークで発表して以来、今回が最初のレストランショーなので百黙に絞った」と話し、純米大吟醸、大吟醸、Alt3(オルトスリー=第3の選択)の3種を持ち込んだ。最も高価なオルトスリーは最高級の山田錦で仕込み、ワインのボルドーやオーパス・ワンのように、複数の原酒を同社の熟練ブレンダーがブレンドした。「熟成した古酒をブレンドしているので、複雑な味わいがある」と語る。

ラーメンのブースは、どこも試食の行列が見られた

 百黙の開発の経緯を良津さんは「菊正宗は料理を引き立てる脇役的な立場でブランド展開してきたが、これからは料理も主役、百黙も主役。もっとお酒が前面に出てもいいのではというコンセプトで出したブランド」と説く。この日の試飲者の反応は「素晴らしかった。特にオルトスリーは古酒をブレンドしているので、ワインを好む人は『コンプレックスな味わいだ』と言ってくれ、これからが楽しみで期待している」と目を輝かせた。先に売り出しているニューヨークでは高級和食店や高級すし店に卸しているが「今まで菊正宗ではアプローチできなかったフレンチ、イタリアンなどのジャンルを超えたプレミアムなレストランやお客さんに届けたい。百黙を持ってワインの世界にも入っていきたい」と今後の展開を意欲的に語った。
 大畑社長は掲げたテーマ「Zero Waste」について「環境の持続可能性と経営の収益性の関係を参加者に分かってもらえたと思う。会社や店の利益につながるので、バランスをとりながら長い目で見て続けてほしい」と願った。会場全体を見て回り「毎年、常に各社が新商品を紹介して、参加者が新しいものを見つけられたのがよかった。各社から『いい商談ができた』などの声が多く聞け、セミナーや新しい料理の提案もでき、お客さんの喜ぶ声が聞けたのがうれしい」と喜んだ。
 日本食のトレンドは、価格帯、品揃えともに多様化が続くと予想し「ラーメンの人気は高く、ポケもはやり、食は常に新しいものが生み出されるので、そういった新しいものをできる限り紹介したい」と述べ、具体的な例として日本の国民食のカレーを挙げた。カレーはインド発祥だが「日本風にアレンジされたいろいろな料理がアメリカで受け入れられている。裾野が広がれば、日本食の関心も求める人も増える」と力を込め、トレンドの発信に意欲を示した。【永田潤、写真も】

自信の新ブランド「百黙」の試飲を勧める菊正宗の良津智成さん(右奥)

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