耳で味わう極上の文学:文化の秋に有意義なひと時

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日米交流12回目の朗読会

「平家物語」壇ノ浦の戦いの情景を語る堀田紀眞さん

 「朗読ネットワーク日本」と「LA朗読グループ」主催の第12回日米交流ロサンゼルス朗読会が10月13日、小東京の禅宗寺で催された。オープニングにはジャズ演奏も繰り広げられ、文化の秋にふさわしい有意義な時間となった。

 干支を一回りした12回目の開催は令和初の記念の会にもなった。初回から参加するのは「朗読ネットワーク日本」主宰の堀田紀眞さん(日本在住)と「LA朗読グループ」代表の木村秀隆さん(パームスプリングス在住)。

樋口一葉の「わかれ道」を表情豊かに語る木村秀隆さん

 木村さんが今回選んだ作品は樋口一葉の「わかれ道」(1896年、明治29年初出)。木村さんはしっとりとした声を響かせて、作中に描かれた明治の市井の人々の会話を息づかせる。文字数にすると7千字以上を木村さんは何も見ずに30分かけて丁寧に語った。
 堀田さんは長年携わってきた「平家物語」の朗読を宮尾登美子の「宮尾本」を基に自ら構成。「壇ノ浦の戦い」の章、都落ちした平家一門が幼い安徳天皇に入水をうながす場面では一段と熱のこもった語りを披露した。堀田さんは「日本語の美しさと日本文学のすばらしさを一人でも多くの人に伝えたいとの思いで続けている」と述べた。

穏やかな語りで賢治の世界観を聴衆に伝える金子ミツ江さん

 「LA朗読グループ」の川崎香さんは1986年にスペースシャトル・チャレンジャーの事故で亡くなった故エリソン・オニヅカ飛行士について監修。日系の偉大な先人オニヅカ飛行士の軌跡を画像と共に簡潔にまとめた。川崎さんは「朗読の技術はキャリアの長い木村さんらにかなわない」と言いつつ「内容に力を入れた」と胸を張る。

 宮沢賢治の「虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)」は、日本在住で「さくらの会」所属の金子ミツ江さんが朗読。現代にも通じる賢治の価値観と自然観を穏やかな語りで聴衆に伝えた。
 フルート・サックス奏者の谷則安とミュージシャン仲間(ピアノのアーク佐野、ベースの佐藤雅俊、ドラムの阿久津恵太)による「ノリ・タニ&トモダチバンド」がジャズ演奏で参加した。グラミー賞最優秀ニューエイジアルバム賞受賞の琴アーティスト松山夕貴子も加わり数曲コラボレートするなど、朗読の会に贅沢なひと時を添えた。

堀田紀眞さんの朗読のサポートに立つフルート奏者の谷則安(右)と琴奏者の松山夕貴子

 一人で来たという観客の渡辺真理さんは「日頃聞きなれない昔の日本語に触れ、その響きの美しさに改めて気づかされた」と感慨深げに語った。友人と訪れた羽田野佳子さんは「朗読だけでなく著名アーティストのジャズ演奏もあり、得をした気分」と喜んだ。
 「情報文は読めるのに創作文の読解が難しい」という悩みを持つ三宅敦子さん。 人の語りで創作文も理解できたと喜び「自分と同じ悩みを持つ人にこの朗読会を紹介したい」と話した。【麻生美重、写真も】

アーク佐野のピアノ伴奏に合わせ日本の童謡「おさななじみ」を合唱する出演者と司会の塩谷房子さん(左)

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